全 情 報

ID番号 05754
事件名 賃金等請求事件
いわゆる事件名 京都広告社事件
争点
事案概要  従業員兼務の会社取締役が取締役として再任されず、一従業員となったことおよび職務怠慢や営業成績の低下を理由として賃金を減額されたことにつき、右措置を違法であるとして減額される以前の賃金を請求した事例。
参照法条 労働基準法24条1項
労働基準法2章
労働基準法91条
体系項目 賃金(民事) / 賃金の支払い原則 / 全額払・相殺
裁判年月日 1991年3月20日
裁判所名 京都地
裁判形式 判決
事件番号 平成1年 (ワ) 2552 
裁判結果 一部認容,一部棄却(控訴)
出典 労働民例集42巻2号137頁/タイムズ769号166頁/労働判例601号72頁/労経速報1460号23頁
審級関係 控訴審/06001/大阪高/平 3.12.25/平成3年(ネ)960号
評釈論文 柴田厚司・平成4年度主要民事判例解説〔判例タイムズ821〕314~315頁1993年9月
判決理由 〔賃金-賃金の支払い原則-全額払〕
 賃金は雇用契約の主要な内容をなすものであって、使用者が一方的に減額出来ないことはいうまでもないところ(労働基準法九一条が就業規則で減給の制裁を定める場合であっても、その減給は一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の一〇分の一を超えてはならない旨規定しているのは、労働者の非違行為に対し予め就業規則で制裁として定める減給であっても右の限度に止めなければならず、賃金の減額について使用者の恣意を許さない趣旨であり、右の趣旨からしても使用者が自由に賃金を長期にわたって減額し得ないのは明らかである)、右認定の事実によると一九八二年一月の基本給を一九万四〇〇〇円から一四万円に減額したのは無効であるというべきである。被告会社は原告が右時点から取締役でなくなり五万五〇〇〇円の役員手当がなくなったため、そのような金額になったと主張するが、前記のとおり原告は取締役在任中基本給一九万四〇〇〇円のほかに右金額の役員手当の支給を受けていたのであるから、取締役でなくなったからといって基本給まで減額する理由になりえない。また被告会社は一九八三年四月原告の基本給をさらに一一万五〇〇〇円に減額したのは原告の職務怠慢のためであると主張するが、前記のとおり原告がA会社の和議開始の申立てや保全処分の決定に気付くのが遅れそれがために同会社に対する売掛金の回収が不能になった部分があったとしても(原告がこの事を知っていながら殊更被告会社に損失を被らせるためにそれを隠していたとまで認められる証拠がない。もしそうであれば懲戒処分の対象となりうる)、賃金減額の理由になりえないし、また原告の営業成績が低下したことも減額を正当化するものではない。