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ID番号 05818
事件名 地位確認等、不当利得返還等請求控訴事件
いわゆる事件名 セントランス・セントラルエンジニアリング事件
争点
事案概要  Y1会社・Y2会社間の業務委託契約等に基づいて約二年間Y1会社に派遣されたY2会社社員がY1会社との雇用契約上の地位の確認等を請求した事例。
参照法条 労働基準法2章
民法623条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 使用者 / 派遣先会社
労働契約(民事) / 成立
裁判年月日 1991年10月29日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 平成2年 (ネ) 3509 
裁判結果 棄却(上告)
出典 タイムズ783号128頁/労働判例598号40頁
審級関係 上告審/06020/最高一小/平 4. 9.10/平成4年(オ)540号
評釈論文
判決理由 〔労基法の基本原則-使用者-派遣先会社〕
〔労働契約-成立〕
 控訴人と被控訴人Y2会社との間では明確に雇用契約が締結され、当初の契約の締結及び契約の更新の際にはそれぞれ契約書も作成されており、賃金はすべて被控訴人Y2会社から支払われていたこと、被控訴人Y2会社と同Y1会社とは、同一グループに属する関連企業で、従業員の出向等の協力関係にあり、また、同Y1会社と同Y3工業とは、請負契約を締結して長期間継続的に取引をしていたものであるが、被控訴人らは、いずれも、それぞれ事業内容を異にする独立した法人企業であって、控訴人の就労については、被控訴人Y2会社と同Y1会社との間には出向契約が、同Y1会社と同Y3工業との間には業務の請負契約が締結されており、被控訴人Y2会社は自らの意思で控訴人の採用、賃金その他の勤務条件の決定、指揮監督も行っており、他の被控訴人らの意思によりこれらが決定されていたというような関係はないこと、控訴人は、被控訴人Y2会社に雇用され、自ら同意して同Y1会社に出向の上、同Y3工業の工場内で同Y1会社の請け負った委託業務に従事したものであること、控訴人自身、自己が同被控訴人の従業員であるとの意識を有していたと認められる証拠はなく、むしろ、控訴人は同被控訴人の従業員とは異なった取扱いを受けていることを熟知していたものと認められ、昭和五九年五月に永田らと折衝した際にも、被控訴人Y2会社に対しては正社員にすることを要求し、同Y1会社に対しては同社との雇用契約の締結を求めるなどしていることからすれば、控訴人と被控訴人Y2会社との雇用契約並びに被控訴人ら間の前記出向契約及び業務の請負契約が形式的なものであるとは到底いえず、控訴人が専ら被控訴人Y3工業の工場内で作業をし、具体的な作業につき同被控訴人の従業員から技術指導や指示を受けたりしていたことがあるとしても、控訴人と同被控訴人との間に黙示の雇用契約が成立していたとは認められず、他にこの点の控訴人主張の事実を認めるに足りる証拠はない。
 したがって、控訴人の被控訴人Y3工業に対する請求は、その余について判断するまでもなく、いずれも失当というべきである。