全 情 報

ID番号 05819
事件名 損害賠償等請求事件
いわゆる事件名 光和商事事件
争点
事案概要  金融会社の従業員が債権回収につき事故を生じさせたとして解雇されたケースで、右解雇の無効確認と賃金の支払、慰謝料の支払を請求した事例。
参照法条 民法709条
民法1条3項
労働基準法2章
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 使用者に対する労災以外の損害賠償
解雇(民事) / 解雇権の濫用
退職 / 合意解約
裁判年月日 1991年10月29日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 平成2年 (ワ) 4236 
裁判結果 一部認容,一部棄却
出典 労働判例599号65頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔退職-合意解約〕
 被告代表者本人の供述中には、訴外Aが原告に対し「被告を辞めてもらわな仕方がない。」と言うと、原告がこれに対し「分かりました。」と言った旨述べる部分があるが、右供述は、原告本人尋問の結果に照らして到底措信できず、他に、被告が雇用契約の合意解約を申し入れ、原告がこれを承諾したものと認めるに足りる証拠はない。
〔解雇-解雇権の濫用〕
 被告代表者本人の供述中には、本件解雇の理由として、昭和六三年一二月ころ、被告に金一億二〇〇〇万円もの債権回収に関する事故が発生したこと、右事故はB会社の従業員であるCが仕組んだものであるところ、原告は右Cの紹介で被告に入社し、入社後もCと気脈を通じていたからであると述べる部分がある。しかし、右事故の発生自体は認められる(原告本人尋問の結果)ものの、右事故がCの仕組んだものであること、原告がそれに関与していたことを認めるに足りる証拠はなく、かえって、原告本人尋問の結果によると、原告は右事故に全く無関係であったことが認められる。したがって、本件解雇は解雇権を濫用したものとして無効である。
〔労働契約-労働契約上の権利義務-使用者に対する労災以外の損害賠償〕
 二及び三1で認定した事実によると、本件解雇は、不法行為に該当するものと認めるのが相当である。
 しかし、一般に、解雇された労働者が蒙る精神的苦痛は、解雇期間中の未払賃金が支払われることにより慰謝されるものというべきであり、本件原告に、解雇時からこれを承認するまでの間の未払給与及び賞与が支払われてもなお償えない特段の精神的苦痛があったと認めるに足りる証拠はない。