全 情 報

ID番号 05838
事件名 解雇無効確認等請求事件
いわゆる事件名 大東文化学園事件
争点
事案概要  理事長らを中傷する言論を行ない、その後も敵対的な態度をとり続けた学校法人の職員に対する普通解雇の効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法89条1項3号
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 名誉・信用失墜
裁判年月日 1991年12月24日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和63年 (ワ) 12036 
裁判結果 一部認容,一部棄却(控訴)
出典 時報1409号118頁/労働判例600号23頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-名誉・信用失墜〕
 原告は、仮に解雇事由があるとしても本件解雇は解雇権の濫用に当たり無効であると主張する。なるほど、前記認定事実に《証拠略》を総合すると、原告は、本件解雇に至るまで他に懲戒処分を受けたことはなかったこと、被告学園に就職後、係長、課長と昇進し、本件解雇当時就職部渉外課長の職にあって部下をもつ立場を任されており、勤務成績自体には特に問題はなかったこと、原告とともに公開質問状の作成にかかわったA厚生センター部長及びB情報処理センター部長代理は一か月の減給処分を受けたにとどまったこと、原告は本件解雇当時四七歳で、妻と小学生の子供一人を扶養していたこと、被告学園内部では、上層部において従前から複雑な人的対立、紛争が続いたり、しばしば怪文書が撒かれたりしており、原告の言動がそのような異様な雰囲気に触発され、あるいは理事者間の対立抗争に利用しようとされた面も窺われること、被告学園側の一部の対応には原告に対する対決姿勢がみられなくはないことが認められる。
 しかしながら、原告の対内的な被告学園執行部に対する敵対、排撃の言動は、被告学園組織の秩序を著しく乱すものといわざるを得ず、また、原告が被告学園理事、評議員等多数の関係者に送付した文書には、確たる裏付けもないのに被告学園の名誉を甚だしく損ねかねない内容が記載されており、このようなことを放置すれば被告学園内の秩序、規律が崩壊しているとみられるに至ることも十分予想され、しかも、原告の被告学園執行部に対する敵対、排撃の態度は、数か月もの間継続的に行われ、さらに次第に拡大する方向に向かっていたことに鑑みると、本件解雇の段階で、被告学園がもはや被告学園内の秩序維持のためには、原告を被告学園職員として留めておくことができないと判断したことには、無理からぬものがある。したがって、右認定の事情を考慮してみても、本件解雇に解雇権濫用にわたる点はないというべきである。