全 情 報

ID番号 05851
事件名 障害補償金支給決定取消等請求事件
いわゆる事件名 唐津労働基準監督署長(唐津港運輸)事件
争点
事案概要  米の積み出し作業中に転倒し負傷を負った労働者の腰椎に生じた障害につき、業務起因性が認められないとし、右障害を除いてなされた障害等級認定が適法とされた事例。
参照法条 労働者災害補償保険法7条
労働者災害補償保険法15条
労働者災害補償保険法15条の2
体系項目 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 業務起因性
労災補償・労災保険 / 補償内容・保険給付 / 障害補償(給付)
裁判年月日 1990年2月9日
裁判所名 佐賀地
裁判形式 判決
事件番号 昭和63年 (行ウ) 4 
裁判結果 一部認否
出典 労働判例603号99頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-業務起因性〕
〔労災補償・労災保険-補償内容・保険給付-障害補償(給付)〕
 本件事故による負傷部位は右膝部分に限定されており、本件事故後二、三日休養して従前の仕事に復帰していること、原告が右膝から腰部にかけて痛みを感じるようになったのは本件事故から一年半以上経過した昭和五五年一二月ころからであること及び原告は本件事故前である昭和五一年一〇月ころ変形性腰痛症の傷病名で一か月程度休業し通院加療を受けていることが認められ、右各事実に照らすと、前記各診断の事実のみをもって原告の腰椎等に生じた前記障害が本件事故に起因することを推認できず、その他本件全証拠を検討しても、これを認めることができない。
 従って、請求原因3記載の諸症状が本件事故に起因するものと認定することはできない。
三 そうすると、本件事故に起因する原告の障害は右膝関節に残存する頑固な神経症状であるとなされた本件処分に事実誤認の違法はないというべきであるから、事実誤認を理由として本件処分の取消しを求める請求は理由がない。
四 請求の趣旨2項について
 請求の趣旨2項は、被告に対し原告の障害が障害等級第三級に該当することを前提として、労災保険法による障害補償給付支給に関する処分をすべきことを求めるものであって、いわゆる義務付け訴訟に該当するものであるが、このような義務付け訴訟は法律上行政庁が当該処分をなすべきこと及びその内容が裁量の余地なく一義的に定められている場合であって、かつ当該行政処分がなされずにいる状態が原告の法益を著しく侵害しているときに例外的に許容されるものと解するのが相当であるというべきところ、本件において原告の障害がいずれの障害等級に該当するかの判断に裁量の余地がないとはいえず、また、本件訴訟において、原告は同一労働災害につきなされた本件処分の取消しを求めており(請求の趣旨1項)、仮に右処分取消判決があれば、その拘束力によって、被告は、取消判決の趣旨に従い、改めて労災保険法による障害補償給付支給に関する処分をする義務を負う(行政事件訴訟法三三条一項、二項)のであるから、本件において義務付け訴訟による救済を求めることは許されないというべきであり、請求の趣旨2項の訴えは不適法である。