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ID番号 05861
事件名 休業補償給付等不支給処分取消請求事件
いわゆる事件名 那覇労働基準監督署長事件
争点
事案概要  労災保険法上の保険給付に関する処分の取消請求において、審査会の裁決を経ないで直ちに取消訴訟を提起した場合につき、右訴訟は不適法として却下された事例。
参照法条 労働者災害補償保険法35条
労働者災害補償保険法37条
行政事件訴訟法8条
体系項目 労災補償・労災保険 / 審査請求・行政訴訟 / 国等による支給処分の取消等
裁判年月日 1991年10月1日
裁判所名 那覇地
裁判形式 判決
事件番号 平成3年 (行ウ) 1 
裁判結果 却下(控訴)
出典 訟務月報38巻4号720頁
審級関係 控訴審/福岡高那覇支/平 3.12.24/平成3年(行コ)1号
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-審査請求・行政訴訟-国による支給処分の取消等〕
 一 労災保険法の保険給付に関する処分は大量に行われ、それに対する不服申立事案も多数に及ぶところ、被災者に対するより迅速かつ公正な統一的処理を図る必要があり、その審査に当たっては専門技術的知識が要求される等の特殊性を有するため、同法は、第一審たる審査請求に簡易迅速な処理を期待し、第二審たる再審査請求に厳格慎重な統一的処理を要請する二審制度を採用し(同法三五条)、労働保険審査会における裁決の前置主義を規定していること(同法三七条)からすれば、行政事件訴訟法八条二項一号の「審査請求」は労災保険法にいう「再審査請求」を指すものと解するのが相当である。したがって、沖縄労働者災害補償保険審査官に審査請求をした日から三か月を経過しても決定がないことを理由に同号に該当するとの原告の主張は採用できない。
 二 更に、原告は、労働保険審査会がした昭和五七年四月二〇日付け裁決の内容からして、本件について労働保険審査会の裁決を経てもその結果は明らかである旨主張するが、本件における給付請求は、右昭和五七年の裁決以降の期間に係る療養補償給付及び休業補償給付の請求であって、右裁決後に作成された新たな資料の存在も当然予想されるなど、右裁決の存在のみをもって、本件についての労働保険審査会の裁決の結果が客観的に明らかであるとは言い難い。そして、他に原告が労働保険審査会の裁決を経ないことにつき正当な理由があるものとは認められない。
 三 よって、本件訴えは不適法であるからこれを却下することとし、主文のとおり判決する。