全 情 報

ID番号 05873
事件名 地位保全等仮処分申立事件
いわゆる事件名 ニチワ事件
争点
事案概要  業務上の指示に対する違反、業務妨害行為等を理由とする懲戒解雇に対する仮処分申請につき、懲戒事由に対する疎明がないとして無効とされた事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務妨害
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務命令拒否・違反
裁判年月日 1992年1月17日
裁判所名 宮崎地日南支
裁判形式 決定
事件番号 平成3年 (ヨ) 22 
裁判結果 一部認容
出典 労働判例605号96頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-業務妨害〕
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-業務命令拒否・違反〕
 1 債務者は、債権者を懲戒解雇した理由として、【1】平成三年七月一五日に直属上司のA課長が指示したタップ工程の緊急体制対応のための対策案を策定しなかったこと、【2】同年七月二七日にA課長が指示した金型図面の作成を怠ったこと、【3】同年八月二日にA課長が指示したタップ工程外注化に伴う機械搬出要員の選定を怠ったことが、就業規則七一条一六号、七〇条一〇号の懲戒解雇事由に該当し、また、【4】債務者の従業員で組織される全日本金属情報機器労働組合B支部(本件組合)の副委員長であるCが、債務者の企画する製造工程の一部外注化計画に反対するため外注先企業を訪問したが、債権者は本件組合執行委員長としてそれを黙認したこと、【5】同年八月一三日債務者が外注化のための機械搬出作業を実施しようとした際に、本件組合執行委員長として機械搬出作業を実施すれば負傷者が出るかも知れないなどと債務者に事前通告してその搬出作業を阻止しようとしたこと、【6】同日債務者の機械搬出作業を実力で妨害したことが、就業規則七一条一〇号に該当するとしている(証拠略)。
 2 ところで、債権者がもと債務者の従業員であったことは争いがないのであるから、債務者においてその地位を喪失した事実、すなわち懲戒解雇が有効に行われたことを立証すべきである。そこで債務者のあげる右解雇理由について検討するに、【1】ないし【3】については、その存在を疏明する証拠はなく、かえって、証拠(証拠略)によれば、債権者は、【1】及び【2】については指示された対策案ないし図面を作成して上司に交付し、【3】についても製造課統括係長として同課担当係長に要員選定を指示していたことが窺える。したがって、就業規則七一条一六号、七〇条一〇号について該当する事由の疏明はない。
 次に、【5】のうち債権者が「負傷者が出るかもしれない」旨の通告をしたこと及び【6】について債権者自身が実力行為に出たことを疏明する証拠はない。また、【4】の事実及び【5】のうち債権者が本件組合の執行委員長として外注化計画に反対したことがあったとしても、それらは、就業規則七一条一〇号に該当する事由であるとは解されない。したがって、就業規則七一条一〇号に該当する事由の疏明もない。
 3 したがって、債務者に債権者に対する懲戒解雇が有効に行われたと疏明する証拠がなく、したがって、債権者は、債務者に対し雇用契約上の権利を有していると一応認められる。