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ID番号 05883
事件名 裁決取消請求事件
いわゆる事件名 大阪労働災害保険審査官等事件
争点
事案概要  労災保険審査官の不作為に関する審査請求につき、右請求を却下した労働大臣の裁決が適法とされた事例。
参照法条 労働者災害補償保険法35条1項
労働者災害補償保険法37条
行政事件訴訟法8条2項1号
体系項目 労災補償・労災保険 / 審査請求・行政訴訟 / 行政処分の存否、義務づけ訴訟等
裁判年月日 1992年1月28日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成3年 (行ウ) 139 
裁判結果 棄却
出典 労働判例606号32頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-審査請求・行政訴訟-行政処分の存否、義務づけ訴訟等〕
 2 ところで、労働者災害補償保険法による保険給付に関する決定に不服のある者は、労働者災害補償保険審査官に対して審査請求をし、その決定に不服のある者は、労働保険審査会に対して再審査請求をすることができるものとされ(同法三五条一項)、保険給付に関する決定の取消しの訴えは、それについての再審査請求に対する労働保険審査会の裁決を経た後でなければ提起することができないものとされている(同法三七条)。したがって、同法による保険給付に関する決定の取消しを求める訴えについては、行政事件訴訟法八条二項一号にいう「審査請求」は、右再審査請求を意味し、再審査請求があった日から三か月を経過しても労働保険審査会の裁決がないときに初めて、これを経ないで右の訴えを提起することができるものと解される。
 そして、前記の認定事実によれば、原告は、本件審査請求の審査庁であるA審査官らから、労働者災害補償保険法三七条により、本件審査請求を取り下げると行政事件訴訟を提起することはできないこととなり、本件審査請求があった日から三か月を経過しても行政事件訴訟法八条二項一号によって行政事件訴訟を提起することのできる場合には当たらないのではないかとの、法律上正当な指摘を受け、熟慮を促されたにもかかわらず、自己の誤った理解に固執して敢えて本件取下げをしたものであることが認められる。以上の事実関係の下にあっては、たとえ原告には、本件取下げをするについて、動機錯誤があり、かつ、そのことを審査庁に表示していたとしても、専門家であるA審査官らの指摘を素直に受け入れて関係法令を確認するなどのことをせず、敢えて本件取下げに及んだものであって、原告には右錯誤について重大な過失があったと評価せざるを得ない。
 3 そうすると、労働者災害補償保険法による保険給付に関する決定に対する審査請求の取下げについては民法の錯誤に関する規定が類推適用されるべきものであって、原告には本件取下げについて要素の錯誤があったとしても、原告にはこれにつき重大な過失があったものというべきであるから、本件取下げを無効とすることはできず、結局本件審査請求は本件取下げによって終了し、大阪労働者災害補償保険審査官に本件審査請求に対する決定に係る不作為は存在しないこととなる。したがって、その不作為についての審査請求を却下した本件裁決は適法である。