全 情 報

ID番号 05886
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 全税関神戸支部事件
争点
事案概要  昇任、昇格、昇給について組合間の差別があるとの主張に対し、これが否定された事例。
参照法条 労働基準法24条
国家公務員法27条
国家公務員法108条の7
体系項目 賃金(民事) / 賃金請求権と考課査定・昇給昇格・降格・賃金の減額
裁判年月日 1992年2月4日
裁判所名 神戸地
裁判形式 判決
事件番号 昭和49年 (ワ) 578 
裁判結果 棄却
出典 労働民例集43巻1号23頁/時報1439号3頁/タイムズ797号50頁/訟務月報38巻8号1371頁/労働判例607号25頁/法律新聞1046号6頁
審級関係
評釈論文 小牧英夫・労働法律旬報1287号37~40頁1992年5月10日/上山興士・労働法律旬報1287号41~44頁1992年5月10日/長淵満男・労働法律旬報1287号31~36頁1992年5月10日/渡邉裕・平成4年度重要判例解説〔ジュリスト臨時増刊1024〕218~220頁1993年6月/藤原稔弘・季刊労働法165号165~168頁1992年12月
判決理由 〔賃金-賃金請求権と考課査定・昇給昇格・賃金の減額〕
 以上検討したような非違行為の態様及び情状並びに出勤状況などの事情が勤務成績の評価において不利に考慮され、その結果、昇任、昇格及び昇給、とりわけ勤務成績が特に良好であることが必要とされる特別昇給に影響を及ぼしたものであることは、原告らが反則事犯の検挙等について税関長の表彰を受けたことや裁判所等の依頼による鑑定を行なった実績のあること等を考慮しても、十分に考えられるところである。そして、原告らは、各原告ら及び右原告らと入関時期、入関資格を同じくする非組合員のうち、昇任、昇格、昇給において標準的な取扱を受けている者(標準者)を基準として設定し、それらの者と対比して、原告らが昇任、昇格及び昇給について差別扱いを受けた旨主張するが、原告ら以外の職員の具体的な勤務態度(非違行為の有無、出勤状況等を含め)が明らかでないので、原告らの主張する標準者を基準として原告らが差別を受けていたものと速断できないし、現に生じている格差が任命権者である税関長が原告らに対し裁量の範囲を超えた違法な取扱をしたことによるものと認めるに足りる証拠もない。
 したがって、神戸税関当局が一貫して原告組合を敵視して組合に対する不当な攻撃や組合員に対する差別扱いをしてきたとする原告らの主張についてはこれを認めることができない。
 もっとも、原告らの中には係争期間中の非違行為が極めて少ないが、あるいは時期的に限られていて、しかも出勤状況に格別問題とされる事情が認められない者があり、これらの者については右の格差と非違行為等との関連性が薄いということができる。しかし、これらの原告らの格差の程度は任用や給与制度から通常生じる範囲を超えるものとはいえないから前記のように税関当局が原告組合員を差別扱いしたことを窺わせる事情が認められない以上、このような格差をもって組合所属を理由とする差別扱いによるものということはできない。
 なお、原告らは、原告らの中には右のような非違行為が極めて少ないのに昇任、昇格等の不利益を受けている者がある一方で非違行為を行なったとされる時期に昇任、昇格した者があるなど、昇任、昇格が非違行為と無関係に行なわれているとして、両者の間に因果関係がない旨主張する。しかしながら非違行為は、それにより懲戒処分がなされた結果、昇給の障害事由となるばあいを除いて、勤務成績の一内容として他の事情とともに考慮されて昇任、昇格させるかどうかの判断に影響を及ぼすものであり、しかも、この判断は昇任、昇格については対象者が当該官職、等級に在職在級した全期間を通じてなされたものであるから、原告主張のような事実があるからといって、非違行為と昇任、昇格等との間に因果関係がないということができない。