全 情 報

ID番号 05917
事件名 損害賠償等請求事件
いわゆる事件名 全国労働者共済生活協同組合連合会
争点
事案概要  労災事故後の残存症(愁訴)につき、本件事故との因果関係が否定され、損害賠償請求が棄却された事例。
参照法条 民法416条
民法715条
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任
裁判年月日 1992年4月22日
裁判所名 仙台地
裁判形式 判決
事件番号 昭和62年 (ワ) 1549 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 タイムズ798号224頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務・使用者の責任〕
 六 右一乃至五で認定した事実を総合し検討するに、本件では、(1)本件事故の態様に照らすと、原告が、Aとともに、本件コンテナをローラーコンベアー3から同4に移動しようとして、向い合ってこれを持ち上げようとした時にバランスを崩しコンテナから両手をはなしたことにより、不自然な姿勢となり、腕、背部、腰部等の筋肉を急に引張るような外力が加わったことは考えられるものの、腰部への衝撃により、脊髄に損傷を与えるような特別な力が加わったものとたやすく推認することはできないこと、(2)原告は本件事故後も自ら歩いて職場に戻っていること、(3)原告とBとの間柄は、平素から円満ではなく、本件事故後の対応をみても、Bに対する強い反感が認められ、入院の動機に同人に対する抗議の意図もいくぶんあったものと推認されること、(4)原告は本件事故以前にも異常に多様な病気で頻繁に被告会社を休んでいること、(5)原告の脊髄の左右両側に存在する痛覚、触覚を支配する刺激伝導回路が損傷を受けていれば、原告の腰痛・左臀部痛、左下肢知覚鈍麻、しびれ感、左下肢筋力低下の発現は説明できるが、本件事故のような単発事故により左右両側に存在する痛覚、触覚を支配する刺激伝導回路が損傷を受けることは通常認められないこと、(6)原告の残存症状には心因的要素が加わっていると推認されること、以上の重要な諸事実が存在するものといわなければならず、これらに照らすと、本件事故と原告主張の傷害及び残存症状との相当因果関係は、これが存在しないとの疑いが生ずるのは当然である。〈書証番号略〉及び弁論の全趣旨によると、原告は、昭和六一年二月二四日労働基準監督署長から、本件事故を労働災害として障害等級五級を認定され、特別支給金二二五万円の支給決定を受けたことが認められるが、右決定は敍上原告の既往歴が明らかにされず、被告会社への十分な事実調査もなく、主として原告の申立によって本件事故を労働災害と認定したものと解さざるを得ず、右支給決定があることをもってして、原告の主張を維持するに足りる証拠とすることはできない。
 他に、右疑いを払拭できる証拠は存在しないから、右相当因果関係は証明されたものということはできない。