全 情 報

ID番号 05926
事件名 解雇無効確認等請求事件
いわゆる事件名 斉藤コード製造事件
争点
事案概要  勤務態度不良、女子従業員に対する異常行動を理由とする解雇が有効とされた事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 均等待遇 / セクシャル・ハラスメント、アカデミック・ハラスメント
解雇(民事) / 解雇事由 / 勤務成績不良・勤務態度
裁判年月日 1992年5月25日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成3年 (ワ) 10287 
裁判結果 棄却
出典 労働判例613号40頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労基法の基本原則-均等待遇-セクシャル・ハラスメント〕
〔解雇-解雇事由-勤務成績不良・勤務態度〕
 そこで、本件解雇事由の存否について検討する。
 証拠(〈証拠・人証略〉)によると、次の事実を認めることができる。
 【1】 朝礼時及びその後の言動
 被告においては、毎月一回、東京工場食堂において、A社長ないし各担当責任者が従業員に対し話をしていたが、この際、原告は、分けの分からない、あるいは関係のない質問をしたり、その二ないし三日後、女子従業員に対し、A社長とか上司を呼び捨てにしたうえ、「こいつはこんな馬鹿なことをいっている」、「俺が社長になった方がいい」などと述べていた。
 【2】 勤務態度
 原告は、技術部検査課に所属し、検査員として製品の受け入れ検査及び出荷検査を担当していたが、上司の指示に従わないで勝手に作業をして他の従業員に迷惑を及ぼしたり、作業中、他の従業員に対し、「ソクラテスがどうの」、「思想がどうの」などと話し作業の妨げをしたり、製品の検査が済んで次の工程のためこれを箱に入れて持っていくべきところ「こんな箱に詰めて持っていくのは俺の仕事ではない、馬鹿のやることだから他の奴にやらせればいい」などといって上司の指示に従わずに自分勝手な態度に出ていた。
 このようなことから、被告は原告を社員食堂に移し、ここで一人で作業をさせていたが、ここにおいても上司の指示に従わないで勝手な行動に出ていた。
 【3】 女子従業員に対する言動
 原告は、女子従業員に対し、その作業中、「お前は○○さんとエッチしたことがあるか」とか「俺はメス犬とやった」などと述べたり、食事中の女子従業員に対しても再三同様のことを述べたり、退社する女子従業員に対し、毎日出入口に待機していて、「一緒に帰ろう」、「お茶を飲みにいこう」などと誘い、これを断られると追い掛けるなどの行動に及び、このため、女子従業員の中には退社した者もいた。
 B総務部長は原告に対し、右のような言動を注意したが、全く聞くような態度を示さなかった。
 【4】 その他の言動
 原告は、得意先の社員に対しても、原告の上司を馬鹿にして名前を呼び捨てにしたり、仕事ができないなどの悪口を述べていた。
 【5】 誓約違反
 右のような原告の言動を憂いたB総務部長は、平成二年三月二〇日、原告に右のような言動をしない旨の誓約書を提出させたが、その後も原告の言動は改らなかった。
 以上の事実を認めることができる。
 右認定事実によると、原告には就業規則五六条三項に該当する事由が存したというべきである。
 原告は、本件解雇は被告が感情に走り、他の従業員に対する見せしめのためになした旨主張するが、このような事実を認めるに足りる証拠はない。 したがって、本件解雇は有効である。