全 情 報

ID番号 06023
事件名 賃金請求事件
いわゆる事件名 アーバンコアオート事件
争点
事案概要  資金不足から採用後短期間で解散するに至った中古外車販売会社の元従業員が、右会社およびその元代表取締役を相手として、会社が十分な代数の車を仕入れ、適切な公告をし、原告らが販売実績を伸ばせるようにすべきであったのにそれをせずに損害を与えたとして損害賠償を請求した事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任
裁判年月日 1992年9月22日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成3年 (ワ) 4203 
裁判結果 棄却
出典 労働判例617号40頁/労経速報1487号8頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務・使用者の責任〕
 原告らは、前記契約の下においては、被告会社は原告らに対し、販売用の質量共に充分な台数の車を仕入・展示をし、適切な広告をし、原告らが販売実績を伸ばせるよう教育指導する等の債務を負うと解すべき旨主張する。
 しかしながら、特別な合意があれば格別、そうでない限り、右契約からは被告会社が原告らに対し、被告主張のような債務を負うとは到底解されないところ、本件においては右特別な合意があったと認めるに足る証拠はない。
 したがって、原告らの右主張は理由がなく、その余の点につき判断するまでもなく、被告会社に債務不履行責任があるとは認められない。〔中略〕
 原告らは、代表取締役には、資金繰り、仕入状況・人的・物的設備の過不足等充分な調査・研究の上に方針を決定し、通常予測し得る経済事情の変動のごときによって、会社の運営に支障を来し、もって会社債権者に不測の損害を及ぼさぬようにすべき注意義務があるとした上で、本件においては、被告Yの資金繰り計画が安易・軽率・不十分であったことが資金不足を生じ、ひいては右解散に至る原因であり、会社に対する任務懈怠・重過失に該当すると主張する。
 しかしながら、確かに、被告会社においては中古車販売の営業を始めてから四か月後に資金不足を生じているが、そのことから直ちに資金繰り計画が安易・軽率・不十分であったとすることはできず、具体的にどのような資金繰り計画があり、それがどの点で安易・軽率・不十分であり、重過失に該当するのかを、原告らにおいて具体的に主張立証しなければならないところ、この点についての主張立証がなく、したがって原告らの被告Yに対する損害賠償請求もその余の点について判断するまでもなく理由がない。