全 情 報

ID番号 06046
事件名 療養補償給付等不支給処分取消請求事件
いわゆる事件名 大分労基署長(森永電気商会)事件
争点
事案概要  電気・配管工事に従事していた労働者の心筋梗塞による死亡につき業務災害に当たらないとした労基署長の不支給処分が争われた事例。
参照法条 労働基準法施行規則別表1の2第9号
労働基準法79条
体系項目 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 脳・心疾患等
裁判年月日 1992年11月10日
裁判所名 大分地
裁判形式 判決
事件番号 昭和63年 (行ウ) 1 
裁判結果 棄却
出典 労働判例624号47頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-脳・心疾患等〕
 まず本件事故が発生した前日から当日にかけての業務であるが、流通センターでの作業や養魚場での修理は長年携わっていたもので習熟していた作業であり、養魚場での作業も深夜ではあったが僅か一五分程度で終わったものであること、本件事故前日の夕食は、仕事の関係者らとホルモンを食べに行きビールを少し飲む程度の余裕があったことに照らすと、本件事故の前日から当日にかけて、Aが突然困難な業務に従事したことや、同人にとって精神的な衝撃を受けるような出来事が発生したことは認められない。
 次に、流通センターでの作業が始まってからの状況についてであるが、そこでの作業は長年従事し習熟した電気工事であって経験のない業務に携わったわけではないこと、流通センターの工事に携わってから本件事故が発生するまでには約三週間が経過しているが、八月中の稼働状況については、流通センターでの労働時間や労働密度、休日の有無、流通センター以外の仕事の有無や内容について明らかではなく、その間Aに長期にわたる疲労の蓄積があったと認めることはできないし、却って、同年九月初旬ころが多忙となったのは流通センターの建築関係の工事が遅れた影響もあったためで、これは仕事を開始した当初は仕事にかかろうとしてもできない状況にもあったものと推認されるなどAの流通センターにおける労働密度が継続的に非常に高いものであったとは認められないことなど、流通センターでの仕事が当初より継続的に厳しい労働であり、その間Aに長期にわたる疲労の蓄積があったとは認められない。
 さらに、八月三〇日以降はかなりの長時間労働ではあるが、不慣れで困難な作業でもなく、九月一日が翌二日の午前零時ころまでの作業になったのも他の業者の作業が遅れた影響によるもので、労働密度の格別高い状態が続いていたとは認められないこと、納期に追われることはこれまでもあったものと思われること、また、借金は遅くとも昭和五七年九月ころから始まっており、そのころから資金繰りが順調ではなかったと推認され、本件事故発生当時に特に困難な状況が発生したものとは認められないことなどの事情に照らすと、本件事故前約一週間の業務が重労働であったとは認められるものの、量的、質的に特に過激な業務に就労したことを認めるに足りる証拠はない。
 したがって、Aの死因である心筋梗塞症について業務起因性を認めることはできない。