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ID番号 06065
事件名 公務外認定処分取消等請求控訴/同附帯控訴事件
いわゆる事件名 横浜市立保育園事件
争点
事案概要  市の保育園において保育業務に従事していた保母が頚肩腕症候群に罹患したことにつき、業務災害に当たらないとした労基署長の不支給処分が争われた事例。
参照法条 労働基準法75条
労働者災害補償保険法7条1項1号
労働者災害補償保険法13条
労働基準法施行規則別表1の2第3号
体系項目 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 職業性の疾病
裁判年月日 1993年1月27日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 平成1年 (行コ) 62 
平成2年 (行コ) 169 
裁判結果 棄却
出典 時報1452号137頁/タイムズ814号157頁/労働判例625号9頁
審級関係 一審/04757/横浜地/平 1. 5.23/昭和56年(行ウ)24号
評釈論文 小佐田潔・平成5年度主要民事判例解説〔判例タイムズ臨時増刊852〕330~331頁1994年9月
判決理由 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-職業性の疾病〕
 保育園における保育業務における保母の作業は、多種多様な作業を含み、そのため保母は多種多様な動作や姿勢をとることを強いられるけれども、右作業は一般的には、前示のとおり、前記労働省通達にいう業務のように、上肢という身体の特定の部位に過大な負担を負わせる性質のものとはいえないこと、前示のとおり、被控訴人のA保育園及びB保育園における業務は、一時的に他の時期に比べてその負担が重かった時期もあったが、被控訴人にとりその業務内容、業務量において過大なものであったとはいえないこと、前示のとおり、A保育園及びB保育園における執務環境は、前者について問題はあったものの、いずれも、特に劣悪なものであったとはいえないこと、これらのことに、頚肩腕症候群については、その発症の原因について医学的解明が十分になされておらず、発症者の身体的、心理的因子が絡むことも無視し得ないとされていること(ちなみに、被控訴人は、昭和四六年六月一四日出産し、その後、勤務の傍ら三名の幼い子供の育児に当たっており、また同年一〇月ころ、前示のとおり筋肉痛により治療を受けるなどしており、被控訴人の症状を考えるに当たって、これらのことを全く無視するわけにもいかない。)、保母の業務は身体の両側をほぼ同様に使用すると見られるところ(《証拠略》にも、「保母では、左右の症状が同じ程度に見られることが多い」との記載がある。)、被控訴人の症状は、主として、身体の右側に顕れていること等を考え合わせると、被控訴人は、本件症状発症までに、そしてその後も、相当期間保母の業務に従事してきたものであるから、保育業務と被控訴人の症状との間に何らかの関連があることを否定することはできないとしても、被控訴人の従事した保育業務が、被控訴人の罹患したとされる頚肩腕症候群の発症や増悪の相対的に有力な原因であるとまでは認定することができない。
 したがって、被控訴人の業務と被控訴人が頚肩腕症候群と診断された症状との間の相当因果関係を認めることができないことになり、被控訴人の本訴請求は、その余の点を判断するまでもなく、理由がないといわざるを得ない。