全 情 報

ID番号 06098
事件名 審査請求に対する決定取消請求事件
いわゆる事件名 下妻市公平委員会事件
争点
事案概要  違法な争議行為を理由とする懲戒処分につき、右処分についての審査請求を棄却した公平委員会の裁決に手続違反があるとして取消された事例。
参照法条 地方公務員法50条1項
労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒手続
裁判年月日 1987年10月22日
裁判所名 水戸地
裁判形式 判決
事件番号 昭和61年 (行ウ) 10 
裁判結果 認容
出典 時報1269号77頁/タイムズ661号159頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒手続〕
 一 「本件裁決が、原告らの請求にもかかわらず、口頭公開審理をなさずになされたことにより、地公法五〇条一項に違反することになるかどうかについて検討する。
 1 地公法五〇条一項によれば、不利益処分を受けた職員からの不服申立てを受理した公平委員会は、当該職員から請求があったときは口頭審理を行わなければならず、口頭審理は、その職員から請求があったときは、公開して行わなければならない旨規定されているところであるが、これについて被告は、本件においては、当事者が提出した書面による主張及び証拠資料により、原告らが地公法三七条一項により禁止されている争議行為をし、かつ、これを指導した事実が認定され、同条二項の規定により、原告らは本件懲戒処分につき、本来不服申立権を有しないものと認められた場合であるから、被告が口頭公開審理を開かないで本件裁決をしたことに何ら地公法五〇条一項違反の違法はない旨主張する。
 しかし、不利益処分に対する不服申立を受けた公平委員会は、当該処分の適法性、相当性を適法の審査手続に則り審査し、これに基づいて裁決すべきものであるから、処分理由の存否自体が審査の対象に含まれることは疑いを容れず、本件においては、被告が主張する地公法三七条一項所定の禁止行為の存否そのものが審査手続における判断の対象となっているものであり、その手続について、地公法五〇条一項は不服申立人に審査手続への関与を認め、かつこれに十分な主張、立証の機会を保障する趣旨で設けられたものというべきであるから、不服申立人から口頭公開審理の請求があったときは、同条項に則り公平委員会はその手続のもとで審理すべきことが義務付けられるものと解するのが相当である。そして、かかる趣旨に鑑みれば、被告公平委員会において既に処分理由に該当する事実が存在するとの心証を得ていたとしても、不服申立人から口頭公開審理の請求があった以上、地公法五〇条一項に従い口頭公開審理を開き、不服申立人に主張、立証を尽くさせたうえ、処分理由事実の存否について判断すべきである。従って、この点に関する被告の主張は既に失当であり、本件裁決の手続には地公法五〇条一項に違背する違法がある。
 2 ところで、公平委員会は、地公法に基づき任命権者から独立して設けられた地方公共団体の専門的な人事行政機関として、任命権者の立場に偏することなく中立公正な立場で職員に対する不利益処分の当否を審査すべき職責を負っているものであるから、地公法五〇条一項に違反した審査手続が行われる場合には審査の公正が手続的に損われ、ひいては審査結果の適正に影響を及ぼすこととならざるを得ない。従って、かかる手続的瑕疵は到底軽微なものということはできず、それ自体により本件裁決は取消しを免れないものというべきである。