全 情 報

ID番号 06270
事件名 地位保全等仮処分申請事件
いわゆる事件名 武松商事(再解雇)事件
争点
事案概要  最高裁判所の判決により解雇無効が確定した後、会社を誹謗するビラを配布した等の行為が就業規則所定の解雇事由に当たるとして再度会社から解雇された労働者が、その効力を争った事例。
参照法条 労働基準法89条1項3号
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 会社批判
裁判年月日 1994年4月14日
裁判所名 横浜地
裁判形式 決定
事件番号 平成5年 (ヨ) 760 
裁判結果 認容,一部却下
出典 労働判例656号39頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-会社批判〕
 債務者は、裁判所の判決に従い債権者に対して賃金を支払っていたにもかかわらず、債権者が、A争議支援共闘会議の者とともに、虚偽の事実を記載したビラを配布したり、横浜市に対し、虚偽の事実に基づく要請をしたりしたことが解雇理由に当たると主張する。
 しかしながら、先に認定したとおり、債権者とA争議支援共闘会議の者は、確定判決により、債権者が労働契約上の権利を有することが確認され、それより前に、神奈川地方労働委員会から別紙の救済命令が発せられていたにもかかわらず、債務者が、判決で支払を命じられた賃金を支払うだけで、債権者を原職又は原職相当職に復帰させず、社会保険や雇用保険の取扱いを拒否するなどして従業員として取り扱わなかったため、従業員としての取扱いを求める運動の一環として、債務者の行ったことをそのとおりビラに記載して配布し、そのとおりのことを告げて横浜市に要請したものである。
 このように、右ビラの配布や要請は、債務者のしたことをそのとおり記載し、又は告げて債務者に対して確定判決に基づく正当な取扱いをするよう要求し、横浜市に対して「横浜市指名停止要綱」の趣旨に則った取扱いをするよう要請したものであって、会社の指示、命令に反してしたものではなく、不正、不義の行為ともいえないから、これが就業規則四〇条六号の「会社の指示、命令に従わず業務運営を妨げ、若しくは会社の経営に非協力的な活動のあったとき」、七号の「会社の経営に関し、真相を歪曲して会社に有害な宣伝、流布等を行ったとき」及び一三号の「不正、不義の行為により従業員としての体面を汚したとき」のいずれにも当たらないことは明らかである。
 四 そうすると、本件解雇は、解雇事由なくなされたものであるから懲戒権を濫用するものとして無効というべきである。