全 情 報

ID番号 06333
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 プレス機指先切断事件
争点
事案概要  イラン国籍の男性がプレス機を操作中に右手指四指の指先を切断する事故を被り、使用者に対して損害賠償を請求した事例。
参照法条 民法415条
民法709条
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任
裁判年月日 1992年11月25日
裁判所名 東京地八王子支
裁判形式 判決
事件番号 平成3年 (ワ) 1283 
裁判結果 一部認容,一部棄却(確定)
出典 時報1479号146頁
審級関係
評釈論文 長谷川俊明・国際商事法務22巻3号297頁1994年3月
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務・使用者の責任〕
 被告は、原告ら従業員がフットペダルを使用してプレス機を操作しているのを知りながら、光線式安全装置が作動していないのを放置してきた点で、安全配慮義務に違反していたことになる。〔中略〕
 原告は、入管法別表第一の二所定の「技術」などの在留資格であるいわゆるワーキングビザを取得する意図であった旨供述する。しかし、入管法第七条第一項第二号の基準を定める省令に原告の前記経歴を対照すると、原告が取得しえた在留資格としては「技術」だけしか該当がないところ、同省令は、その要件として、日本人が従事する場合に受ける報酬と同額以上の報酬を受けることのほか、大学あるいは同等以上の教育を受けていない場合、一〇年以上の実務経験を有することを要求している。したがって、原告がいわゆるワーキングビザを取得することは困難であったと認められる。
 そうすると、可能な限り長期間日本に滞在することを望んでいた原告は、もし本件事故に遇わなければ、短期在留資格が切れた後も、多くのイラン人労働者と同じく、日本で稼働し続けた蓋然性が高かったと認められる。ただし、このような労働者は最終的には退去強制の対象とならざるをえないこと、また、妻帯者は単身者ほど長期間日本に滞在しないのが自然であることに徴すると、原告は平成三年五月一六日以降もなお二年間は日本に滞在し、被告から得ていた収入と同額の収入を得ることができたものと認めるのが相当である。その後の収入については、予測することは困難であるから、イランにおける収入の予想に基づいて算定するほかない。