全 情 報

ID番号 06351
事件名 公務外認定処分取消請求事件
いわゆる事件名 大阪府立中宮病院事件
争点
事案概要  府立の自閉児施設において生活指導員としての業務に従事していた者に発症した頚肩腕症候群及び腰痛症の公務起因性が争われた事例。
参照法条 地方公務員災害補償法45条
体系項目 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 職業性の疾病
裁判年月日 1993年12月24日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 平成3年 (行ウ) 59 
裁判結果 認容(確定)
出典 タイムズ843号166頁/労働判例644号12頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-職業性の疾病〕
 前記認定事実によれば、原告ら生活指導員は、遊戯療法を実施して患児を背負ったり抱き上げたり肩車をしたり患児に常時視線を合わせるために中腰・座位の姿勢を取る際に静的筋労作を伴い、あるいは筆記作業に従事する際など動的筋労作を伴うなど頚肩腕症候群を発症しやすいとされる上肢の非生理的な筋労作を行う作業にかなりの程度従事しており、開園当初は慣れない業務につく精神的緊張もかなり伴うなど、前記認定の業務内容からするとA園における生活指導員の業務自体過重性がかなりの程度あったと認めることができ、第一次欠勤後当初は業務が軽減されていたものの、その後昭和四六年七月以降は再び業務量が増加しており、原告が相当の長期間業務に従事することにより局所に疲労が蓄積されてきたと考えることができること、第二次欠勤以降治療に三か月間を越える長期間を要しているけれども、頚肩腕認定基準で適切な療養を行えばおおむね三か月程度で症状が消滅するとされるのはあくまでも目安に過ぎないし、原告には他の疾病の疑いも特になかったこと、原告は、A園で生活指導員の業務に従事してから初めて頚肩腕症候群を発症したものであること、業務の継続によって症状が増悪し、第二次欠勤によって業務を離れると症状が軽くなっていることから、時期的に業務と症状との間に相関関係が認められること、A園と同種あるいは類似の施設において頚肩腕症候群が多発していること、頚肩腕症候群を専門とするB・C両医師が原告の頚肩腕症候群の公務起因性を肯定していることを総合して考えれば、本件疾病と公務との間には関連性が認められる。
 そして、原告には頚肩腕症候群を発症させる有力な原因が他には特に見当たらないことを合わせて考えると、原告の従事した業務が本件疾病の相対的に有力な原因であると認めることができ、本件疾病である頚肩腕症候群に公務起因性を認めるのが相当である。〔中略〕
 原告は、業務の一部とはいえ、第一次疾病の発症までの間おおむね一日一時間以上腰痛症を起こしやすいとされる前記腰痛認定基準の(一)ないし(二)に該当する業務に従事したこと、右業務は全体の業務の一部とはいっても前記のとおり精神的緊張もかなり伴い肉体的にも重労働であり、業務自体の過重性も相当程度認めることができること、原告は、A園において右業務に就いて初めて腰痛症に罹り、第一次欠勤による休業治療により症状が軽快し、その後業務量が一旦は軽減されたものの、昭和四六年七月以降は業務量は再び増加しており、腰痛の症状が再び出てきて次第に悪化したが、第二次欠勤などの休業療養によって症状が次第に鎮静化しており、右経過によれば業務に従事したことと腰痛症の発症に時期的な関連性が認められること、原告の勤務するA園において多数の腰痛症患者が発生していること、A園と同種あるいは類似の施設において多数の腰痛症が多発していること、B・C医師の両名は原告の腰痛症について公務起因性を肯定していること、職業起因性のある腰痛症にもラセグ徴候が見られる場合があることから、本件においてラセグ徴候が生じても公務起因性があることとは矛盾はしないことを総合すると、本件疾病ないし第一次疾病と公務との間に関連性を認めることができる。
 そして、原告には他に有力な発症原因が見当たらないことを合わせて考えると、原告が従事した業務が相対的に有力な発症原因であると認められ、本件疾病ないしは第一次疾病である根性腰痛症の公務起因性を認めることができる。