全 情 報

ID番号 06357
事件名 建物明渡等請求事件
いわゆる事件名 国鉄清算事業団事件
争点
事案概要  国鉄清算事業団の元職員が国鉄清算事業団の再就職促進措置業務の終了に伴い解雇され、宿舎明渡請求がなされたことに関連して、右職員のJR東日本への不採用と国鉄清算事業団への配属の法的意味が争われた事例。
参照法条 労働組合法7条
日本国有鉄道改革法1条
日本国有鉄道改革法23条
日本国有鉄道清算事業団法1条
日本国有鉄道清算事業団法附則2条
体系項目 寄宿舎・社宅(民事) / 社宅の使用関係
労働契約(民事) / 成立
労働時間(民事) / フレックスタイム
裁判年月日 1994年3月28日
裁判所名 千葉地
裁判形式 判決
事件番号 平成4年 (ワ) 1316 
裁判結果 認容(控訴)
出典 タイムズ853号226頁/労働判例668号60頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔寄宿舎・社宅-社宅の使用関係〕
 原告と国鉄は同一法人格であるから、国鉄から原告へ配属された職員は、原告の設立目的等に応じた変容を受けながらも、原則として国鉄における身分関係を有したまま原告の職員たる地位に移行したことになる。したがって、原告の職員は、事業団法によって規律され、公法的色彩を残したいわば公務員に準ずる身分を有するに至ったということができる。
 そして、原告の職員の宿舎利用関係については、公舎基準規程に代わって宿舎等取扱基準規程が規律することになったが、その規律も多数の原告職員の宿舎の利用関係を円滑かつ一律に規律していく必要から認められたものであり、使用料や居住条件等について一々個々の職員の同意を必要とするものではなかった。このように公舎基準規程から宿舎等取扱基準規程へと名称が変わり、原告の設立目的に応じた変容を受けたものの、両規程の実質は同じであり、利用関係の法律的性質も同じであったと解される。したがって、原告における宿舎の利用関係も、民法、借家法等が適用される純粋の契約関係ではなく、宿舎等取扱基準規程によって規律される雇用関係と密接に関連した特殊な法律関係である。
 このような法律関係においては、右(2)において認定したように、宿舎等取扱基準規程が適用される際、現に宿舎等に居住している職員等は、すべて宿舎等取扱基準規程により宿舎に居住している者とみなされ、従来の公舎基準規程による利用関係が引き続き宿舎等取扱基準規程による利用関係に切り替わった結果、原告が各職員に対し、居住の申込とそれに対する居住指定という手続を改めてとらなくても、また、職員が宿舎等取扱基準規程の内容を一々知悉していなくても、有効に宿舎等取扱基準規程によって規律される利用関係に移行したといえるのである。
〔労働契約-成立〕
〔労働時間-フレックスタイム〕
 改革法二三条一ないし四項、附則二項、一項、改革法施行規則九条ないし一二条によれば、承継法人の職員の採用手続は次のとおりであった。
 (1) 承継法人の設立委員は、国鉄を通じ、国鉄の職員に対し、それぞれの承継法人の職員の労働条件及び職員の採用の基準を提示して、職員の募集を行う。
 (2) 国鉄は、承継法人の設立委員から国鉄の職員に対して労働条件及び採用の基準が提示されたときは、書面により、承継法人の職員となることに関する国鉄の職員の意思を確認する。
 (3) 国鉄は、職員の意思を確認した後、承継法人別に、承継法人の職員となる意思を表示した者の中から、当該承継法人の採用の基準に従ってその職員となるべき者を選定し、選定した職員の氏名、生年月日等を記載した名簿を作成し、選定に際し判断の基礎とした資料を添付して設立委員に提出する。
 (4) 右の名簿に記載された職員のうち、設立委員から採用する旨の通知を受けた者であって昭和六二年四月一日の時点で現に国鉄の職員である者は、承継法人の職員として採用される。
 以上のような手続に照らすと、国鉄が前記名簿に記載したからといってその効果として当然にその者が承継法人の職員として採用されることになるわけではなく、承継法人の職員として採用されるためには、別途設立委員から採用する旨の通知を受けることが必要である。すなわち、国鉄は、設立委員に対し、名簿とともにその名簿に記載する職員を選定するに際して判断の基礎とした資料を添付して提出しなければならず、設立委員は、右添付資料を検討し、最終的に当該承継法人の採用基準を満たしているかどうかを判断のうえ、国鉄が名簿に記載した職員の中から承継法人の職員として採用すべき者の採否を決定する権限を有しており、最終的に採用することを決定した者に対して採用通知をすることが要求されていると解される。
 したがって、仮に、本件において国鉄が被告を名簿に記載しなかった行為が不当労働行為に当たるとしても、当然に被告がJR東日本に採用され、その職員たる地位を取得したものということはできない。