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ID番号 06365
事件名 休職命令無効確認等請求事件
いわゆる事件名 富国生命保険事件
争点
事案概要  原告労働者の頚腕肩障害を理由として六カ月及び一年間の休職命令が出されたのに対して、労働者が右休職命令の効力を争い、休職期間中の賃金等を求めた事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 休職 / 傷病休職
労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 就労請求権・就労妨害禁止
裁判年月日 1994年5月25日
裁判所名 東京地八王子支
裁判形式 判決
事件番号 平成5年 (ワ) 1819 
裁判結果 認容,一部棄却
出典 労働判例666号54頁
審級関係 控訴審/06552/東京高/平 7. 8.30/平成6年(ネ)2275号
評釈論文
判決理由 〔休職-傷病休職〕
 被告は、原告の頸肩腕障害の症状の再燃及び増悪可能性がないとはいえないことを理由に、通常勤務に耐えられないものと判断し、その結果、就業規則第四八条一項(5)(本人の帰責事由により業務上必要な資格を失うなど、該当業務に従事させることが不適当と認めた場合)及び同項(6)(その他前各号に準ずるやむを得ない理由があると会社が認めた場合)に該当するとして、原告を休職処分にしたものであると認められる。
 しかし、右頸肩腕障害の症状の再燃及び増悪の可能性が存在するとしても、それは原告の責めに帰すべき事由に起因するものとはいえないから、右症状の再燃等の可能性の存在が前記就業規則第四八条一項(5)の休職事由に該当しないことは明らかである。
〔中略〕
 原告の平成五年三月一日の時点における頸肩腕障害の症状及び勤務状況は、被告において通常勤務を行うことに相当程度の支障をきたすほどのものではないから、就業規則第四八条一項(1)の病気休職事由と同視することはできず、同項(6)の休職事由には該当しないものと認めることができる。
 以上より、第一回休職命令時において、原告には休職事由が存在しなかったものと認められる。
 (3) 第一回休職命令時において、原告に休職事由が存在しない以上、第二回休職命令時における休職事由は、その後の事情の変化等のない限り存在しないところ、本件においては、前記一の7記載の平成五年八月二五日付診断書(〈証拠略〉)によれば、全日勤務が可能であるばかりでなく、むしろ同年三月の時点よりも原告の症状が改善した旨が述べられているから、やはり、第二回休職命令時においても、原告には休職事由が存在しないものと認められる。
〔労働契約-労働契約上の権利義務-就労請求権・就労妨害禁止〕
 原告は労働権の侵害を主張するが、「労働権」の権利の具体的内容が不明確であり、法的保護に値する権利であるということはできない。
 仮に、原告の主張が就労請求権の侵害を意味するとしても、使用者は、賃金を支払う限り、提供された労働力を使用するか否かは自由であって、労働受領義務はなく、労使間に特約がある場合や特別の技能者である場合を除いて、労働者に就労請求権はないものと考えられるから、本件における原告にも就労請求権はないものと認められる。