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ID番号 06401
事件名 地位確認仮処分申立
いわゆる事件名 ソニー事件
争点
事案概要  時短を受ける権利を有する地位の保全を求める訴訟につき、本件協定においては、短縮時間の消化方法については、各事業所の実態に応じて事業所ごとに対応することとされ、会社はいまだその決定をしていないから被保全権利を欠くとして、右申請が却けられた事例。
参照法条 労働組合法16条
労働基準法92条
労働基準法93条
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 労働契約と労働協約
就業規則(民事) / 就業規則と労働契約
裁判年月日 1994年7月7日
裁判所名 東京地
裁判形式 決定
事件番号 平成6年 (ヨ) 21110 
平成6年 (ヨ) 21137 
裁判結果 却下
出典 労働判例675号69頁
審級関係 控訴審/東京高/平 6.10.24/平成6年(ラ)801号
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-労働契約と労働協約〕
〔就業規則-就業規則と労働契約〕
 本件申立は、いずれも時短を受ける権利を有する地位の保全を求めるものであるが、前述のとおり本件協定においては、短縮時間の消化方法については、各事業所の実態に応じて事業所毎に対応することとされ、現に平成五年においても個人別休日の取得により消化する旨債務者とA労組とが合意した後、債務者が債権者らの希望に基づき必要最小限度の調整をした上で決定したものであること、平成六年の債権者らが保全を求めている四〇時間分に相当する分については債務者は何ら決定を行っていないことについて当事者間に争いがない。
 以上によれば、本件の被保全権利は、債務者の決定を待って初めて具体的な請求権となるものであり、債務者がこれを行っていない本件においては、たとえその存在が認められたとしても、未だ抽象的なものにとどまることが明らかである。かかる抽象的な権利を有する地位を保全したとしても、これに基づいて時短の利益を受けることはできない以上、債権者らの損害又は危険の回避を図るという見地からは意味がないと言わざるを得ない。仮処分が、たとえ暫定的ではあっても裁判所による公権的な判断であって、これが債務者の地位に与える影響力は極めて大きいことを考慮すると、本件のような事案において仮処分を発することは相当でないと考えられる。