全 情 報

ID番号 06407
事件名 地位保全等仮処分命令申立事件
いわゆる事件名 湯川胃腸病院事件
争点
事案概要  無届欠勤、遅刻、早退が多いことを理由とする総婦長に対する懲戒解雇につき、権利濫用にも該当せず有効とされた事例。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法89条1項9号
民法1条3項
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 勤務成績不良・勤務態度
解雇(民事) / 解雇権の濫用
裁判年月日 1994年11月8日
裁判所名 大阪地
裁判形式 決定
事件番号 平成6年 (ヨ) 546 
裁判結果 却下
出典 労経速報1550号19頁/労働判例664号14頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-勤務成績不良・勤務態度〕
〔解雇-解雇権の濫用〕
 (一) 右1で疎明されたところによれば、債務者が本件解雇の理由として主張する欠勤等のうち、一部には正当の理由を備え、かつ、就業規則所定の手続を履践しているものもみられるが、債権者は、前記1(二)の期間において、少なくとも、事前にも事後にも届出のない欠勤を九日(うち八日については正当の理由の疎明がない。)、事前にも事後にも届出のない二時間以上四時間未満の遅刻又は早退を合計六回(うち四回については正当の理由の疎明がない。)、事前に届け出ているが正当の理由のない二時間以上四時間未満の早退を一回、事前にも事後にも届出のない二時間未満の遅刻又は早退を合計七回(うち六回については正当の理由の疎明がない。)、事前に届け出ているが正当の理由のない二時間未満の遅刻を二回していることとなる。そして、これらは、前記1(一)で疎明された就業規則所定の各懲戒事由に該当するものである。
 その上、(証拠略)によれば、債権者の右の欠勤等は、債権者の統括する看護課の他の職員に比べても異常に多いことが疎明される。
 そして、前記1で疎明されたように、事後的に有給休暇扱いとなったにせよ、右以外にも無断で欠勤等をしていることも合わせて考えると、債権者は、総婦長としての適格性を欠くものと評価されてもやむを得ないというべきである。
 (二) もっとも、(証拠略)によれば、以上のような欠勤等の一部について、債権者の給与計算上、欠勤控除等がなされていないことが疎明される。しかし、(証拠略)によれば、それは、当時、債務者病院において、債権者の勤務形態や待遇について、未解決の問題点があったため、債務者の裁量でそのようにしていたものであり、債務者の給与計算がやや恣意的であったことは否めないが、このことをもって、右の欠勤等が正当なものとなるわけではないし、また、本件解雇の真の動機が別にあるとの疎明があるとすることもできない。
 (三) また、本件解雇は普通解雇であるから、解雇事由を事前に債権者に告知し、弁解の機会を与えないでなされたからといって、直ちに右解雇が権利濫用となるものではない。
 (四) したがって、債務者の主張するその余の解雇理由について判断するまでもなく、本件解雇は、権利濫用にあたらないものということができる。