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ID番号 06413
事件名 退職金請求控訴事件
いわゆる事件名 トヨタ工業事件
争点
事案概要  終業後の花見会を無断で行ったとして会社から責められたのに対抗して早退したこと、部下らが集団不出社したことを理由に懲戒解雇され、退職金が支払われなかった事例につき、懲戒解雇事由は存在せず、退職金の支払い義務があるとした一審判決が認容された事例。
参照法条 労働基準法89条1項3号の2
労働基準法89条1項9号
体系項目 賃金(民事) / 退職金 / 退職金請求権および支給規程の解釈・計算
賃金(民事) / 退職金 / 懲戒等の際の支給制限
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務懈怠・欠勤
裁判年月日 1994年11月16日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 平成6年 (ネ) 2875 
裁判結果 棄却
出典 労働判例665号45頁
審級関係 一審/06287/東京地/平 6. 6.28/平成5年(ワ)13882号
評釈論文
判決理由 〔賃金-退職金-懲戒等の際の支給制限〕
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務懈怠・欠勤〕
 当裁判所も、被控訴人らの本訴請求は、原判決が認容した限度で理由があり認容すべきものと判断する。〔賃金-退職金-退職金請求権および支給規程の解釈・計算〕
 控訴人は、被控訴人らが昇給辞令の受領を拒否して退職したので、退職金額は昇給前の賃金額を基礎として算定されるべきであると主張する。しかし、引用した原判決の「事実及び理由」第三の二2に説示のとおり、昇給辞令交付日である平成五年四月一五日、被控訴人Y1は出社せず、また、同Y2は、A経営統括管理本部長に対し、「気持ちが不安定で整理がつかないので早退させて欲しい。昇給辞令は、本部長預かりにしてほしい。」と告げ、その後、同本部長に対し、「有給休暇で休ませてほしい。」といって退社し、結局、昇給辞令を受領するに至らなかったにすぎず、被控訴人らが昇給辞令の受領を拒否したとする(人証略)の供述は採用することができず、他に被控訴人らが昇給辞令の受領を拒否した事実を認めるに足りる証拠はない。のみならず、証拠(〈証拠略〉)及び弁論の全趣旨によれば、控訴人は、被控訴人らに対し、昇給辞令を撤回したことはなく、かえって、昇給後の資格給、職能給等に基づいて、同月分の給与及び解雇予告手当てを支払ったことが認められるのであるから、控訴人自身が昇給の効果を認めているものというべきであり、控訴人の前記主張は、採用することができない。