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ID番号 06416
事件名 賃金請求事件
いわゆる事件名 在日米空軍第一八設営群事件
争点
事案概要  年休の指定に対し 時季変更権を行使したとして欠勤扱いとし、賃金を減額したケースにつき、原告以外に休暇による欠務者はなく、原告に替わる要員がいなくても予定の業務量を全て支障なく、かつ無理なく遂行しているとして、適法な時季変更権の行使ではなく、減額した賃金を支払わなくてはならないとされた事例。
参照法条 労働基準法39条1項
労働基準法39条4項
体系項目 年休(民事) / 年休権の法的性質
年休(民事) / 時季変更権
裁判年月日 1994年11月24日
裁判所名 那覇地沖縄支
裁判形式 判決
事件番号 平成4年 (ワ) 203 
裁判結果 認容
出典 労働判例670号41頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔年休-年休権の法的性質〕
〔年休-時季変更権〕
 3 在日米軍に勤務する従業員の年次休暇等の適用規定について
 在日米軍の需要に係る労務が提供された場合における賃金及び諸手当に関する条件その他の雇用及び労働の条件、労働者保護のための条件並びに労働関係に関する労働者の権利は、相互間で別段の合意をする場合を除くほか、日本国の法令の定めるところによる(地位協定一二条五項)。
 そこでまず、日本国の法令(労働基準法)が年次有給休暇について定めるところをみると、年次有給休暇の権利は、同法三九条一項及び二項の要件の充足により法律上当然に生ずるものであり、労働者がその有する年次有給休暇の日数の範囲内で始期と終期を特定して休暇の時季指定をしたときは、客観的に同条四項ただし書所定の事由(請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合)が存在し、かつ、これを理由として、使用者が適法な時季変更権の行使をしない限り、右指定により年次有給休暇が成立し、当該労働日における就労義務が消滅するものである。
 次に、在日米軍勤務従業員の労働条件等に関する日本国、アメリカ合衆国相互間の合意である基本労務契約が年次休暇(年次有給休暇と同じ)につき定めるところをみると、第七章(休暇)A節(年次休暇)5b(休暇の変更)は、「監督者は、従業員が指定した日に休暇を使用することが、当該機関の任務遂行の妨げとなるような場合においては、その休暇の日を変更することができるものとする。この場合、監督者は、両者の合意を条件として代わりの日を提示するものとする。」と定めている。
 4 そこで、本件時季変更権行使の適法性につき判断するに、前示2の事実によれば、原告が年次休暇の時季指定をした平成三年八月二日当時、基地内住宅の補修工事が集中する時期にあたり、またサービスコールも多数あったものの、右当日、原告の所属するA班においては、原告以外に休暇による欠務者はなく、原告に代わる要員がいなくても予定の業務量を全て支障なく、かつ無理なく遂行している。したがって、原告の同日の労働が同班の業務の運営にとって必要不可欠であったということはできず、また、Bは、原告に対し、同日に代わる日の提示もしておらず、本件時季変更権の行使に適法な事由が存したとは認められない。