全 情 報

ID番号 06420
事件名 遺族補償給付等不支給処分取消請求控訴事件
いわゆる事件名 佐伯労働基準監督署長事件
争点
事案概要  粉じん作業に従事し、じん肺に罹患した労働者が肺がんで死亡した場合につき、じん肺と肺がんとの間に因果関係を肯定する医学的状況にないとして業務起因性が否定された事例。
参照法条 労働基準法75条2項
労働者災害補償保険法7条1項1号
労働者災害補償保険法12条の8第1項
労働基準法施行規則35条別表第1の2第5号
じん肺法4条2項
体系項目 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 業務起因性
労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 職業性の疾病
裁判年月日 1994年11月30日
裁判所名 福岡高
裁判形式 判決
事件番号 平成3年 (行コ) 7 
裁判結果 原判決取消,棄却(上告)
出典 タイムズ888号186頁/訟務月報41巻11号2786頁/労働判例673号85頁
審級関係 一審/大分地/平 3. 3.19/昭和63年(行ウ)3号
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-業務起因性〕
〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-職業性の疾病〕
 3 以上のとおり、じん肺と肺がんとの関連については、多発する症例の報告や高率の合併頻度に関する報告は増えているものの未だ両者の因果関係を肯定する医学的状況にはない。
 こうした現状に鑑み、じん肺と肺がんとの関係について、労働省は、専門家会議の報告を踏まえて、前記局長通達を発して、これにより措置すべきものとする基準を設定したものである。すなわち、同通達は、じん肺と肺がんとの因果関係は、医学的に明確でないが、臨床上、高度に進展したじん肺病変の存在が、肺がんの早期診断あるいはその予後に悪影響を及ぼしているとみられる点を考慮して、特例的な行政上の措置として、じん肺管理区分が管理四と決定された者又は管理四相当と認められる者で、現に療養中の者に発生した原発性の肺がんのみを、業務上の疾病として取扱うこととしたものであつて、同通達は相応の合理的な根拠を有するものというべきである。したがつて、Aの所見をこれに適用した場合に管理区分三にすぎなかつた本件においては、業務起因性を認めることはできないものといわざるをえない。
 第四 結論
 そうすると、Aの死亡は業務上の疾病に因るものではないとしてなされた本件処分は相当であつて、これを違法として取り消した原判決は不当であるからこれを取り消し、被控訴人の請求を棄却することとする。