全 情 報

ID番号 06433
事件名 地位保全等仮処分申立事件
いわゆる事件名 共立工業事件
争点
事案概要  不況にともなう賞与不支給提案に対する非協力的な態度、社長に対する批判等を理由とする懲戒解雇につき、被解雇者に相当とはいいきれない点、あるいは表現等に配慮を要する点があったとはいえ、相当性の程度を大きく逸脱しているとはいえず、懲戒権の濫用として無効であり、通常解雇としても、解雇権の濫用に当たり無効とされた事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
民法1条3項
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の濫用
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 暴力・暴行・暴言
解雇(民事) / 解雇事由 / 暴力・暴行・暴言
解雇(民事) / 解雇事由 / 協調性の欠如
解雇(民事) / 解雇権の濫用
裁判年月日 1995年1月23日
裁判所名 大阪地
裁判形式 決定
事件番号 平成6年 (ヨ) 3063 
裁判結果 一部認容
出典 労働判例675号63頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒権の濫用〕
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-暴力・暴行・暴言〕
〔解雇-解雇事由-暴力・暴行・暴言〕
〔解雇-解雇事由-協調性の欠如〕
〔解雇-解雇権の濫用〕
 1 本件カーリフト問題についてみるに、この点は、債権者自身が申請した法的手段により、検査役が選任され、その結果、この点については、「異常な取引であるとすることはできない」との結論を得ているにもかかわらず、相当期間経過した平成六年八月に至ってもなお全く同様に債務者及びAの行為を問題としているのであり、しかも、本件疎明資料によっても、右検査結果が誤りであるというだけの資料の存在は認められないのであるから、債権者が確たる証拠もなく紛争を蒸し返しているとの趣旨の債務者の主張にも一理あるといわざるをえない。しかし、他方、本件疎明資料及び審尋の全趣旨によれば、債権者は、検査報告があって後、平成六年八月の時点まで、本件カーリフト問題について蒸し返すようなことはしていないことが一応認められ、加えて、右判示のとおり、賞与不支給の経理的説明を要求する中で、Aの方からカーリフト問題を含む右検査の点が話題とされたことに誘発されて、債権者の右行為がされたものであること、債権者は、株主総会の席上、株主として右発言をしているものと評価されることも考えれば、債権者の右行為の問題性の程度は高くはないというべきである。
 2 次に、賞与問題に関しての債権者の行為は、従業員としての交渉態度、株主としての帳簿閲覧要求の手続等としてみると、債権者に相当であったとはいいきれない面があることも否定できないが、相当性の程度を大きく逸脱しているとまでは認められない。
 3 引退発言問題についても、Aが長期間入院し、職務に当たれなかったことは事実であり(前判示)、発言の方法、表現等において、債権者に配慮が求められる点がなかったとはいいきれないが、相当性の程度を大きく逸脱しているとは認められない上、株主の立場からの発言とも評価しうることも考慮すれば、債権者の右行為の問題性の程度は高くはないと解される。
 4 そうすると、本件事実関係のもとにおいて、債権者を懲戒解雇に処するのは、処分として重すぎるものであり、社会通念上相当として是認できず、懲戒権の濫用として、本件懲戒解雇は無効である。
 また、通常解雇としてみても、右事実関係のもとにおいては、解雇に処することは著しく不合理であり、社会通念上相当なものとして是認することができないのであって、解雇権の濫用として、本件通常解雇は無効である。