全 情 報

ID番号 06491
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 西武交通興業事件
争点
事案概要  組合役員が団体交渉中に会社の代表取締役から傷害を受けたとして、右代表取締役および会社を相手として損害賠償を請求した事例。
参照法条 民法709条
民法715条
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 使用者に対する労災以外の損害賠償
裁判年月日 1994年10月28日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成5年 (ワ) 2163 
裁判結果 一部認容
出典 労働判例673号121頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-使用者に対する労災以外の損害賠償〕
 原告本人尋問の結果、前記認定事実及び弁論の全趣旨を総合すれば、本件交渉は、事前に文書による申入れを経た上、本件当日の午前九時三〇分ころ組合委員長のAが口頭で申入れ、被告Yがこれに応じて午前一〇時頃から開始されており、これは被告会社の営業時間内であったこと、交渉の当事者は、組合の委員長、副委員長、書記長と被告会社代表取締役の被告Y、係長A、事務職員Bという構成であること、交渉内容は、主に組合員Cの定年後における嘱託雇用問題であったことがそれぞれ認められ、以上からすれば、本件交渉は被告Yの職務行為に属するものであると認めることができる。したがって、本件行為による本件傷害は、被告Yが職務を行うに付き原告に加えた損害であると認められ、この点の被告の主張は理由がない。
 三 結論
 以上によれば、本件行為により、原告に発生した精神的損害の賠償については、被告両名が共に責任を負うことになる。その金額については、本件傷害の程度や本件傷害を生じた経緯等の他、弁論の全趣旨によって推認される被告Yの行為が原告の労働組合活動の自由に与えたであろう影響の程度、原・被告各本人尋問の結果によれば被告会社は、本件傷害により原告が休業せざるをえなくなった五乗務につき休業補償をしていると認められること、原告本人尋問の結果によれば、本件傷害の治療費につき被告会社が自主的に負担したことが推認されること、その他諸般の事情を考慮し、金一〇万円とするのが相当である。また、弁護士費用については、本件不法行為と相当因果関係に立つ損害として、被告らに負担させるのが相当であるが、その金額としては、慰藉料の認容額とのかねあいから、その二割の金二万円が相当である。さらに、弁護士費用の遅延損害金の起算点については、不法行為時とするのが相当と判断する。