全 情 報

ID番号 06512
事件名 懲戒解雇無効確認等請求事件
いわゆる事件名 ダイナム事件
争点
事案概要  パチンコ店にマネージャーとして勤務していた労働者がマネージャー在任中に自らあるいは内妻と共謀してパチンコ店の特殊商品を持ち出し、これを換金して横領したことを理由に懲戒解雇されたことにつき、その効力を争った事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務上の不正行為
裁判年月日 1995年3月20日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成3年 (ワ) 5334 
平成3年 (ワ) 5428 
裁判結果 棄却,却下
出典 労働判例679号68頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務上の不正行為〕
 原告が不正行為を行っていたことは、前記1(二)のとおり、金町【1】号店の従業員であるA、B、Cの内部告発書(〈証拠略〉)があり、その内容は、原告から命令され自らも日計表の改竄を行ったことを告白し(〈証拠略〉)、あるいは原告の内妻Dが特殊商品をバッグに入れ、持ち出すものを目撃した(〈証拠略〉)等、迫真性に富む生々しいものであり、その信用性は高いと認められ、ダブルカウント、特殊商品の移動、特殊商品の持ち出し等、原告の自白内容と概ね符号するものである。なお、E店長も、昭和六三年一二月頃、顧客から「原告らしい人物が悪事を行っている」旨の告発を受け、約一五日間にわたって、原告と内妻Dを見張り調査したことがあった。
 そして、前記2のコンピューター資料の調査結果、及び3の棚卸し日計表の調査結果も、原告が特殊商品持ち出しの横領行為を隠蔽するため、ダブルカウント、日計表の改竄等の不正行為を行っていたことを裏付ける内容のものである。なお、原告が金町【1】号店から綾瀬【2】号店に転勤した以降である平成元年四月から六月にかけて、金町【1】号店の棚卸し日計表(〈証拠略〉)をみると、スロットメーターの数値が、スロット大及びスロット小の合計数値より大きくなる異常結果(逆転減少)は、ほとんど生じておらず、この事実も原告による不正行為が行われたことを推認させるものである。〔中略〕
 右認定事実によれば、原告は、被告会社の金町【1】号店のマネージャーとして在任中、昭和六二年四月から平成二年六月にかけ、自らあるいは内妻Dと共謀して、特殊商品を持ち出し、これを換金する横領行為を行い、これを隠蔽するため、ダブルカウント、日計表の改竄、特殊商品の移動等の不正行為を行っていたものであって、被害額は、統計上の数額ではあるが、合計三五〇〇万円にのぼると認められる。
 原告は、機械の故障・トラブル等がありうること、コンピューター表と実際のスロットマシンの台数の相違、コンピューター資料上異常があったとされる数値が小さい日のあること、スロットコインとパチンコ玉の換算率、日計表改竄の可否等の問題点を挙げ、原告による不正行為がなかったと主張するが、いずれも右認定を覆すに足りるものではない。
 そうすると、原告の右横領行為は、被告会社の就業規則一一五条九号(「許可なく金品を持ち出したとき」)に該当するところ、その行為は、マネージャーとしての地位を利用したものであり、期間は長期にわたり横領金額も非常に多額にのぼっていること、原告は、極めて巧妙な隠蔽工作を行っており、そのため発覚するのが遅れた原因となっていること等の事実に徴すると、情状は悪質であり、原告の在任中、金町【1】号店の営業成績は、良好な状態を維持していたこと(この事実は争いがない。)を考慮しても、被告会社が原告に対し、懲戒解雇をもって臨んだことには相当の理由があり、本件懲戒解雇が解雇権の濫用に当たるとは認められない。