全 情 報

ID番号 06549
事件名 配転無効確認請求控訴事件
いわゆる事件名 よみうり事件
争点
事案概要  新聞社の編集局整理部に配属されていた記者が、同局報道部報道課への配転命令を受けたのに対して、その効力を争った事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令の根拠
裁判年月日 1995年8月23日
裁判所名 名古屋高
裁判形式 判決
事件番号 平成4年 (ネ) 578 
裁判結果 認容
出典 労経速報1575号3頁/労働判例689号68頁
審級関係 一審/名古屋地/平 4. 9. 9/昭和58年(ワ)702号
評釈論文 野川忍・ジュリスト1111号241~244頁1997年5月1日
判決理由 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令の根拠〕
 右認定事実によれば、被控訴人はA新聞社に採用されるに当たり、編集部整理課を当初の勤務場所として指定されたが、職種を「整理」に特定して採用することまでの明示の意思表示はなかったというのであるから、それだけでは、A新聞社が当面整理を担当できる人材を求めていたことを認めることはできても、それ以上に、被控訴人とA新聞社の間に、被控訴人が在職中はA新聞社の整理課員としてのみ労務提供する旨特約したとまでは認めることができない。〔中略〕
 被控訴人の本件配転命令の拒否理由に合理性があるかを判断するのに、前記認定事実によれば、本件配転は、本社内の異動であって、被控訴人の通勤時間に影響を与えるようなものではなく、また、仕事の内容の変更を伴う異動ではあるが、異動後における労働条件が以前より加重されるといった、被控訴人に著しい不利益を与えるようなものでもないこと(深夜勤務の時間はかえって減少する。)が認められるのに対し、被控訴人の配転拒否理由の一つである「整理は天職である」との主張は、被控訴人の主観的な職業観の表白とは言えても、客観的に見て、配転拒否を合理化できるような理由とは言えず(なお、被控訴人は、本訴において、被控訴人採用時において、A新聞社との間に、A新聞社の整理課員としてのみ労務提供し、他に異動しない旨の特約の存在を主張するに至ったが、右主張が認められないことは、前記のとおりである。)、また、もう一つの配転拒否の理由である不当労働行為の主張は、これを認めるに足りないことは後記説示のとおりである。
 そうすると、被控訴人の右各理由による配転の拒否は、合理的理由に欠けるものといわなければならない。〔中略〕
 一般に、企業においては、人材の育成や職場の沈滞化の防止等の見地から人事交流の必要があるとされ、それが実行されていることは公知の事実であるが、(人証略)の各証言に弁論の全趣旨を総合すると、新聞発行企業においても、人事交流の必要性は大きいとされ、特に報道と整理との間においては比較的頻繁に交流の行われていること、本件配転は、A新聞社の機構改革に伴う比較的人数の多い異動の一環として行われたものであること、被控訴人は、整理部(整理課)に配属されてから五年余を経過し、整理部における在職期間が長期となった上、編集局内で平の職員としては被控訴人が最年長であって、管理職としての処遇を考えなければならない時期となっていたこと、しかし、同人を将来管理職として処遇するためには、一度報道の仕事を経験することが必要とされていたこと、以上の事実が認められる。
 そうすると、被控訴人につき配転を行う人事上の必要はあったということができる。