全 情 報

ID番号 06606
事件名 地位保全等仮処分命令申立事件
いわゆる事件名 インチケープ・マーケティング・ジャパン事件
争点
事案概要  勤務態度不良等を理由とするサービスエンジニアに対する解雇を相当とした事例。
 協約中の「解雇は組合と事前協議をなし、会社、組合双方の同意をもってこれを行う」とする定めが順守されているとして、当該解雇を相当とした事例。
参照法条 労働基準法2章
労働組合法16条
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 勤務成績不良・勤務態度
解雇(民事) / 解雇手続 / 同意・協議条項
裁判年月日 1995年12月21日
裁判所名 大阪地
裁判形式 決定
事件番号 平成7年 (ヨ) 1653 
裁判結果 却下
出典 労経速報1586号3頁/労働判例688号27頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-勤務成績不良・勤務態度〕
 解雇理由が認められるか否かを検討する。右に一応認定した事実のうち、(六)A会社の件のうちサンプルの瓶を二本紛失したとの事実及び(八)B会社の件については、それぞれ既に示した理由により、これらを解雇理由として認めることはできない。
 しかしながら、右以外の一応認定した各事実によれば、債権者の勤務態度の不良や客先での不始末が継続しており、これまで何度も上司から注意されてきたが、これを素直に受け入れようとはせず、問題点は改善されなかった。これは、就業規則三九条二項(勤怠が不良もしくは勤務成績が著しく不良で、改善の見込みがないと会社が認めたとき)に該当するものと認められる。
 それぞれの事実を個々にみれば、中には程度の軽微なものもないわけではないが、これらを全体としてみた場合には解雇理由として既に十分であり、これを理由とする解雇を解雇権の濫用とみることはできない。
〔解雇-解雇手続-同意・協議条項〕
 (1) 債務者においては、労使間の諸問題の処理や事情説明等は、人事部長又は人事課長と組合三役のいずれかとの間で協議、折衝を行うことが日常化している。債権者の本件解雇については、債務者の人事部長FとC労働組合のD書記長との間で協議が行われた。
 (2) 第一回目の協議は、平成七年四月中旬頃に行われた。この時は、主として組合費の給与からの天引き等の件について、協議し、分離再編後の組合活動のあり方、労使関係のスタイル等についての話し合いもした。話し合いの最後に、相原から債権者の解雇について切り出し、E会社から厳しい苦情がきていること、債権者の処遇について社内で検討中であることを説明した。この時点では、債権者の処遇について最終的に決定していなかったため、具体的な話まではしていないが、Dからは積極的な意見は出なかった。
 (3) 四月二七日、再度協議し、Fは同月二六日付けで債権者に対し退職勧告を出したことを話し、退職勧告に至った理由と内容について説明した。Dから「(債権者)がこれを受けない場合はどうするつもりですか。」との質問があったので、Fは「会社としてこれだけの経緯を経て、なお寛大な処置を拒否された場合は、解雇せざるを得ないでしょうね。」と述べたところ、Dは「今までの状況から仕方がないですね。」と述べた。