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ID番号 06727
事件名 報酬金請求事件
いわゆる事件名 シャネル事件
争点
事案概要  香水、化粧品、女性用衣類等の輸入・販売を業とする会社に雇用され年俸一九〇〇万円で勤務していた労働者が解雇の通告を受けたことにつき、その効力を争い、未払いの報酬金等を請求した事例。
参照法条 労働基準法
体系項目 退職 / 合意解約
裁判年月日 1995年5月26日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成5年 (ワ) 18131 
裁判結果 棄却
出典 時報1567号141頁
審級関係 控訴審/06789/東京高/平 8. 3.27/平成7年(ネ)2658号
評釈論文
判決理由 〔退職-合意解約〕
 右認定事実によれば、原告は、被告会社における経営上の重要な地位に就いて業務に従事してきたが、平成三年三月二七日に被告会社の代表者から任務違反を指摘され、退職について話合いがされたものの、結局、平成三年三月二九日解雇を通告されたものであるが、原告は、その後二回にわたり解雇の撤回を求めただけで、解雇予告期間の満了日である同年六月三〇日まで、被告が解雇を前提に支給を約束した給与・賞与を受領し、その後は被告会社に対して就労受入れを求めないばかりか、給与の支払いを求めたこともないのであって、同年七月二七日からA会社に正社員として採用され就労してきたものであるということができる。
 ところで、原告は、平成三年七月一日から平成四年六月三〇日までの賃金報酬の支払を求めているが、そのためには労務の提供が必要不可欠であるにもかかわらず、被告が本件解雇について原告の同意を得られたことを前提に平成三年三月二九日以降は出勤しなくともよいとの通告をしたのに対して、これに応じて私物を持ち出しているのである。また、原告は、平成三年四月一日以降、勤務をしていないにもかかわらず、その期間の給与のみならず賞与をも受領しておきながら、これらの支給が被告会社の解雇の条件であることを知りつつ、受領に当たってなんらの留保を止めなかったのであるから、原告は同年四月一日以降は、被告会社に対する労務の提供の意思を有していたということはできず、本件報酬金請求にかかる期間中、右意思を喪失していたものというべきである。
 三 以上の事実によれば、原告は、遅くとも平成三年六月三〇日に、被告会社との間で本件解雇予告を承諾し、もって同日、本件雇傭契約を終了させることを合意したものと認めることができる。