全 情 報

ID番号 06744
事件名 地位保全等仮処分申立事件
いわゆる事件名 大阪相互タクシー(乗車拒否)事件
争点
事案概要  部下の乗車拒否事件につき、指導監督義務違反があったとしてなされたタクシー会社の課長に対する諭旨解雇の効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 部下の監督責任
裁判年月日 1995年11月17日
裁判所名 大阪地
裁判形式 決定
事件番号 平成6年 (ヨ) 3261 
裁判結果 認容,一部却下
出典 労働判例692号45頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-部下の監督責任〕
 1 本件乗車拒否により、債務者が本件行政処分を受けたことに照らせば、本件乗車拒否が重大な事案であるといい得る。もっとも、債務者と同一経営者の経営するAタクシー株式会社(以下「Aタクシー」という。)も、乗車拒否により債務者と全く同一の処分を受けているのであって、本件行政処分が行政庁に発覚した場合に取られる処分として著しく重いものとまでは認めることはできない(〈証拠略〉)。
 2 そして、右Aタクシーの事案においては、その担当課長は減給処分に処されたにすぎず、解雇されてはいない(〈証拠略〉)。
 3 前記のとおり、債務者の課長において、乗務員の不始末(乗車拒否も含む)が原因で解雇された者は過去にいない。
 三 まとめ
 以上、債権者の指導監督義務違反の程度、Aタクシーの担当課長の処分との比較、債務者の課長らの過去の処分例との比較等を総合考慮すれば、本件乗車拒否事案において、債権者を指導監督義務違反があるとして諭旨解雇処分とするのは、重きに失する処分であるといわざるを得ない。債務者は、(1)債権者が個別指導を全く行っていなかったこと、(2)本件乗車拒否直後にBが乗客苦情事案を起こしたこと、(3)個別指導することを放棄するが如き発言をしたこと、(4)本件乗車拒否は行政処分を受けた重大事案であること、(5)平成五年四月に、乗務員らに対し、「警告」を発したこと、等をもって、本件事案の特殊性を主張するけれども、右(1)ないし(4)については、すでに検討したとおりであり、又、(5)については、右警告は、直接的には乗務員に対してなされたものであるところ、確かに課長に対してもある程度同趣旨の警告となるという面はないわけではないけれども、右警告をもってしても、本件解雇処分を正当化することはできないというべきである。本件諭旨解雇は無効である。