全 情 報

ID番号 06746
事件名 配置換処分取消請求
いわゆる事件名 姫路郵便局事件
争点
事案概要  保険課から集配課へ配置換された郵便局外務職員が、右配置換につき同意を欠き人事権を濫用するものである等としてその効力を争った事例。
参照法条 労働基準法2章
人事院規則8-12(職員の任免)5条4号
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令の根拠
裁判年月日 1995年11月21日
裁判所名 神戸地
裁判形式 判決
事件番号 平成4年 (行ウ) 43 
裁判結果 棄却
出典 労働判例691号78頁/労経速報1614号20頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令の根拠〕
 1 被告は、本件各処分当時、姫路局保険課主任であった原告らの任命権者であり(郵政省設置法六条一項、郵政省職務規定七条二号別表第一)、本件各処分は、昇任又は降任を伴わない外務職から外務職への異動であるから、その性質は人事院規則八-一二 五条四号にいう配置換に該当し、行政処分に当たる。
 ところで、任命権者は、採用、昇任、転任、配置換又は降任のいずれか一の方法により職員を任命することができ(国家公務員法三五条、人事院規則八-一二 六条一項)、郵政省就業規則においても、「職員は、業務上の都合により転任、配置換又は併任を命ぜられることがあるものとする。」旨規定されているが(同規則一一一条の三)、配置換の要件については、これら関係法令上特段の定めはない。
 したがって、任命権者は、その裁量によって、職員の配置換をすることができ、右裁量には一定の合理的な限界があるにしても、配置換を行うに当たり、当該公務員の同意を要するとする法令上の根拠はないというべきである。〔中略〕
 郵政省においては、定期的に職員から書面で勤務についての希望、意見等を聴取し、その結果を人事異動計画案の作成に当たって斟酌していることが認められるが(〈証拠略〉)、これは他省庁や民間会社でも広く行われている人事に関しての意向調査と同様の人事異動を円滑に行うための措置であると解されるから、聴取された本人の希望や同意は人事異動を行う際に総合考慮される一つの要素にすぎず、(〈証拠略〉)、本人の希望ないし同意を配置換を行う要件としたものとはいえない。
〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令の根拠〕
 本件各処分の前後において、原告らの勤務形態、外回りに利用する車両及び超過勤務時間に差異が生じ、右差異に伴って勤務による疲労度も増加したものと推認されるが、いずれも職務内容の変化に必然的に伴うものであり、これらの差異のうち、超過勤務の増加については、後記認定のとおり時間外手当等が支給されており、外回り用の車両の変更については、機動車運転手当の増額による補償措置がとられている(〈証拠略〉)ことをも考慮すると、特段の事情のない限り、郵政職員として受忍すべき範囲内のものであるというべきである。
 なお、原告らは、本件各処分による強制的な配置換により、多大な精神的苦痛を被り、また、職務の変更による身体的負担の増加により、体重の減少、目や歯の不調などの身体的不調をきたし、さらに、原告X1においては、出勤時間が三〇分早まり、残業時間が増加したことにより、子供の保育園への送迎に支障をきたした旨主張し、その旨供述するが、本件各処分後、原告らが新しい職務に慣れるまでは、緊張が続き、疲労の程度も大きかったであろうと推認されるが、本件各処分時の原告らの年齢(原告X2四三歳、原告X1四〇歳)及び前記二5で認定したとおり、原告らが本件各処分の直前に被告に対して健康である旨の申告をしていることに照らせば、本件各処分による配置換が原告らに受忍限度を越えた著しい精神的又は身体的苦痛を与えるものであったとは認め難く、前記特段の事情があるということもできない。