全 情 報

ID番号 06751
事件名 退職金請求事件
いわゆる事件名 旭商会事件
争点
事案概要  退職金の算定につき、試用期間を在職期間として算入すべきとした事例。
 営業成績不良を理由として退職金を支給しなかったケースにつき、退職金を不支給とすることができるのは、従業員に長年の功労を全く失わせる程度の著しい背信的行為があったときに限られるとして、本件では不支給は許されないとした事例。
参照法条 労働基準法89条1項3の2号
労働基準法89条1項9号
体系項目 賃金(民事) / 退職金 / 退職金請求権および支給規程の解釈・計算
賃金(民事) / 退職金 / 懲戒等の際の支給制限
裁判年月日 1995年12月12日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成6年 (ワ) 11815 
裁判結果 認容
出典 労働判例688号33頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔賃金-退職金-退職金請求権および支給規程の解釈・計算〕
 試用期間中の勤務は雇用契約に基づくものであるから、試用期間は在職期間の一部というべきであり、他方、右付則が存在すること自体から原告の試用期間を在職年数に算入しないとすることはできないし、被告会社が過去に従業員の退職金を支払った際、試用期間を在職年数から差し引いて計算していたとの事実を認めるに足りる証拠はない。したがって、被告会社の右主張は理由がない。
〔賃金-退職金-懲戒等の際の支給制限〕
 原告には、被告会社在職中、問題となる行為があったことは否定できない。すなわち、原告が退職前の一か月ほどの間に一〇数回程度運送業者から謝礼をもらって配送を代行したことは、就業規則一四条4に該当する(勤務時間内の行為と認めるに足りる証拠はないから、同条6に該当するとはいえない。)。しかし、それが原告の一五年間にわたる勤続の功労を全く無に帰させるほどのものとはいえないし、右3前段認定の原告のその他の行為、勤務態度についても、就業規則一三条4の「きわめて不適当と思われる営業態度であると会社が認めたとき」とは、客観的にみて、極めて不適当な営業態度であると認められるときの意味と解すべきであるから、これに該当するということは困難であり、かつ、前同様、それが原告の長年の勤続の功労を全く無に帰させるほどのものであるとはいえない。したがって、退職金不支給の規定に該当するということは無理というべきである。