全 情 報

ID番号 06811
事件名 損害賠償等請求事件
いわゆる事件名 眞壁組事件
争点
事案概要  生コン運送会社とミキサー運転手との契約関係は請負契約の一種である運送委託契約であり、生コン運送会社を含むグループ各社が経済的な結合関係にあるとしても、生コン運送会社は右ミキサー運転手との関係において労働組合法七条の使用者には当たらないとした事例。
参照法条 労働基準法9条
労働基準法2章
民法632条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 労働者 / 委任・請負と労働契約
裁判年月日 1996年5月27日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 平成2年 (ワ) 9214 
裁判結果 認容,一部棄却
出典 労働判例699号64頁/労経速報1611号3頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労基法の基本原則-労働者-委任・請負と労働契約〕
 二 右認定の事実に基づき、原告会社の使用者性について検討する。
 1 被告は、三社及びA会社が原告会社を中心としたBグループを形成し、これらの会社は、法形式上は別個独立の法人格を保有しているものの、その実体は三社が原告会社の生コンクリート製造部門、A会社が原告会社の生コンクリート輸送部門として機能しており、実質的には単一の存在であるから、被告のC会社分会員、D会社分会員との関係において、Bグループの頂点に立つ原告会社は、使用者性を有する旨主張する。
 2 確かに、前記のとおり、三社、A会社は、原告会社と業務上密接な連携を保ち、相互の間においては、親戚や知人等各社の役員が原告Xと比較的近しい人間であることや施設の利用に便宜を計るなど、人的、物的の繋がりが認められるのではあるが、これらの会社は、それぞれの目的や経緯に応じて別個に設立され、法律上も独立した法人格を有しているのである。そして、その経営についても、それぞれの会社が独立の主体として行われている。そして、原告会社と被告の分会員との間には、何らの私法上の契約関係もないことにかんがみれば、原告会社を中心とするグループが存在し、グループ各社が経済的な結合関係を有しているとの一事をもって、原告会社が被告の組合員の実質的な雇主であり、使用者たる地位に立つと認めることはできない。
 よって、被告の右主張は、採用しない。
 3 次に、被告は、C会社やD会社、A会社の法人格の形骸化や濫用を主張するが、前記判示のとおり、C会社やD会社、A会社も、独立の法主体として事業を営んでおり、原告会社と密接な経済的関係を保ちながら、それぞれの計算で業務を遂行しているといえる。そして、平成元年六月一〇日以降は原告会社とC会社、D会社及びA会社との間に役員の兼任がないこと、原告会社はC会社、D会社及びA会社の株主ではないこと、原告会社とC会社、D会社及びA会社との間に経理の混同や資産の共有が窺える事情もないこと、原告会社が人的、物的にC会社、D会社及びA会社に支配を及ぼしている形跡も窺えず、さらには、原告会社が原告Xなどの相続対策や組合対策のため、ことさらに法的規制を潜脱しようとの意図をもって、C会社、D会社及びA会社を設立したり、これを利用したりしたような事情も認められないことを考えれば、C会社、D会社及びA会社の法人格が形骸化しているということはできないし、また、法人格を濫用していると認めることもできない。
 よって、被告の右主張は採用しない。
 4 被告は、さらに、原告会社は、被告の組合員との関係において、労組法七条の使用者たる地位にある旨主張するが、前記判示の事情に加えて、被告の組合員の業務上の指示はEやFが行っており、原告会社は関与していないこと、被告の組合員の受け取る報酬についても、とA会社の協議によって決定されていることからすれば、原告会社がA会社の運転手たる被告の組合員の労働条件の決定について、具体的、実質的な支配力を及ぼしていると認めることはできないから、被告の右主張も採用できない。
 もっとも、前記認定のとおり、原告XとGが原告会社、C会社、D会社やA会社との間の紛争を解決するため、Hを仲介に立てて、協議を行ったのではあるが、右紛争がC会社、D会社などと連携関係をもつ原告会社の営業にも影響を及ぼすことは明らかであり、原告会社としても、無関心を装うことはできない性質のものであることを考えれば、原告Xが、原告会社の代表者としての立場から、右紛争の早期かつ一括的な解決を目指して、右協議に臨んだことも理由があるといえるのであり、このことをもって、原告会社が被告の組合員の使用者たる立場にあることを根拠付けることはできない。また、原告会社がC会社及びD会社に支払うべき代金をA会社の口座に振り込み、A会社がこれを運転手の報酬として支払っているが、前記のとおり、このような扱いも、運転手への報酬支払いの便宜を図るため、C会社及びD会社の指示に基づいて原告会社が行っていたにすぎないのであり、原告会社が運転手の使用者としての立場に基づいて行ったものではないから、右事実が前記判断の妨げになるものではない。
 5 のみならず、原告会社が、被告の組合員との関係において、労組法七条の「使用者」に当たるというためには、被告の組合員と直接の契約関係にあるA会社との関係が労働契約関係であることを要すると解する。
 しかしながら、前記認定の事実によれば、A会社の運転手とA会社との間には明確な雇用契約書は取り交されておらず、その業務の実態も、運転手がミキサー車を所有して輸送に当たっていること、運転手に支払われる報酬は、最低保障はあるものの、輸送量に応じて計算された金額が原則とされていること、諸税については、源泉徴収はなく、各自申告の上、これを納付していること、休憩時間は特段の拘束はなく、自由に過ごすことが認められていること、遅刻に対しても、特段の不利益な処分が行われていないことなどの事実が認められ、これらの事情に徴すれば、そもそも、A会社の運転手とA会社との間の法律関係は、雇用ではなく、請負契約の性質を有する運送委託契約であったとも解されるのである。
 6 そうすると、いずれにしても原告会社は、被告の組合員との関係において、労組法七条の使用者に当たらないといわなければならない。