全 情 報

ID番号 06837
事件名 従業員地位確認等請求事件
いわゆる事件名 日本電信電話(大阪淡路支店)事件
争点
事案概要  上司・同僚に対する度重なる恐喝、脅迫、強要、嫌がらせを理由として諭旨解雇処分を受けた労働者が、その効力を争った事例。
参照法条 労働基準法89条1項3号
民法1条3項
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 暴力・暴行・暴言
解雇(民事) / 解雇事由 / 上司反抗
解雇(民事) / 解雇権の濫用
解雇(民事) / 解雇手続 / 弁明の機会
裁判年月日 1996年7月31日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 平成7年 (ワ) 5294 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 労働判例708号81頁/労経速報1617号10頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-暴力・暴行・暴言〕
〔解雇-解雇事由-上司反抗〕
 被告の、原告の1(一)の行為は就業規則六九条四項(職務上の規律を乱し、又は乱そうとする行為)、一三項イ号(強要して、その就業を妨げたとき)、同項キ号(会社施設内において、風紀秩序を乱すような言動)に、原告の1(二)及び1(三)の行為は同条四項、一三項イ号、同項カ号(会社施設内において、許可なく貼紙、掲示)に、原告の1(三)の行為は同条三項(上長の命令に服さない)、四項、一一項(社員として品位を傷付け、又は信用を失うような非行)、一三項ア号(みだりに執務場所を離れ、勤務時間を変更)、同項イ号、同項カ号、同項キ号に、原告の1(四)及び1(六)の行為は同条三項、一一項、一三項ア号、同項キ号に、原告の1(五)の行為は同条一一項、一三項キ号、同条一項に、原告の1(七)の行為は同条三項、一一項に、それぞれ該当するとの判断は相当である。
 九 抗弁14について
 前記認定の各事実によれば、原告は、多年にわたり、上司、同僚に対して嫌がらせ、恐喝、強要、暴行行為を重ねるなどして、被告会社の秩序風紀を乱し、職場規律の維持及び正常な業務運営を妨げてきたものであって、その間、上司からも再三、注意を受けながら、さしたる反省をすることなく経過してきたものであるというべきであるから、被告が、原告に対して就業規則六九条一四項(再三注意されてなお改悛の情がない)に該当すると判断したことは相当である。
〔解雇-解雇手続-弁明の機会〕
 被告会社の就業規則上、被告会社が社員に対し懲戒処分をなすに当たり、社員の弁明を聴取すべき旨の定めはないことが認められるので、仮に、被告が原告に対し右弁明の機会を与えなかったとしても、そのことは、何ら本件解雇の効力に影響を及ぼすものではない。また、前記認定によれば、原告の各行為は、その内容及び態様並びにその回数等に照らし、原告の余りの無軌道振りや、原告の行為が被告会社の秩序風紀を乱し、職場規律の維持及び正常な業務運営を妨げたなどの点において、極めて著しいものがあるので、被告が原告に右弁明の機会を与えなかったとしても、それのみによって、直ちに被告による原告の解雇が違法無効となるとはいえない。したがって、原告の反論2も理由がない。
〔解雇-解雇権の濫用〕
 原告には、被告就業規則所定の各懲戒事由に該当する事実があり、かつ、その行為の内容及び態様並びにその回数も、尋常ならざるものがあるので、被告において、原告に対し、懲戒処分として、極刑ともいうべき懲戒解雇を選択する余地も十分にあったというべきところ、被告は、原告に対し、諭旨解雇をなすに止め、原告に対し、退職金の八割を支給すること(この点は、被告会社の認めるところである。)としたのであって、本件解雇をもって、過酷と言うべき事情はなく、処分の公平・適正のいずれの観点からみても、これを違法無効と言うことはできない。また、以上によれば、本件解雇が解雇権の濫用であると言うこともできない。