全 情 報

ID番号 06844
事件名 賃金等請求事件
いわゆる事件名 エール・フランス・コンパニー・ナショナル・デ・トランス・ポール・ザエリアン事件
争点
事案概要  本件における年次有給休暇発生の基準日は、当該労働者の入社日の応当日であり、基準日以前に退職する者には四日の特別付与休暇が発生しているとし、四日を超える休暇を無断欠勤として賃金を控除することは許されるとした事例。
参照法条 労働基準法39条1項
労働基準法39条2項
体系項目 年休(民事) / 年休の成立要件 / 出勤率
裁判年月日 1996年8月27日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成7年 (ワ) 25501 
裁判結果 一部認容(控訴)
出典 タイムズ935号117頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔年休-年休の成立要件-出勤率〕
 3 また、基準日以前に退職する定年退職者に対しては、その年の一月一日以降退職日までの期間一か月について基準日まで勤務すれば発生する年次有給休暇日数の一二分の一の割合による日数を特別に付与するという取扱いをしており、その年に定年退職する予定の職員にはその日数が通知されていた。以上の事実が認められ、右認定を履すに足りる証拠はない。
 被告における右の取扱いによれば、原告の年次有給休暇の基準日は入社日の応当日である毎年一一月一八日ということになり、本来平成六年度の年次有給休暇は同年一一月一八日にならなければ発生しないというべきであるから、同年一月一日から定年退職日である三月一〇日までの期間については、一か月につき基準日まで勤務したと仮定した場合の年次有給休暇日数の一二分の一の割合によって特別に付与される四日以外にはないものと解される。
 確かに、年次有給休暇の基準日について本件就業規則の文言は必ずしも明確ではないし、いわゆる前倒しの取扱いや定年退職者の特別の取扱いについて明文の規定を欠くなど、年次有給休暇に関する被告の就業規則の定めは不備であり、疑義を招くおそれがあるとの謗りは免れない。しかし、そのために原告が主張するように、被告はいわゆる前倒しの取扱いによって入社二年目以降の職員の年次有給休暇の基準日を毎年一月一日にずらしたと解するほかないと断定することはできない。そして、労基法三九条に規定する年次有給休暇の算定の基礎となる継続勤務年数の起算日が雇入れの日であることは明らかであるところからすれば、被告における運用をもって同法に違反するとはいえないし、全労働者に年次有給休暇を斉一的に付与するため、労働者毎に異なる基準日をずらして同一の日にする方が簡便であるとはいえても、そうしないでいわゆる前倒しの運用により事実上同様の効果を狙ったからといって、労働法所定の内容より労働者に不利にならない以上、これを潜脱するとの非難も当たらない。
 そうすると、原告が平成六年一月一日から同年三月一〇日までの間に取得した一二日の休暇のうち四日は年次有給休暇と認めたが、それを超える部分については欠勤として扱った被告の処理は正当というべく、同期間中に二五日の年次有給休暇を取得する権利を有することを前提にした原告の主張は採用できない。