全 情 報

ID番号 06867
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 富士電機冷機事件
争点
事案概要  CCDスキャナー等の販売事業計画を被告会社に持ち込んだ原告が、被告会社から社内事情により取り上げることができなくなったとされたのに対して、被告会社に採用を内定されていたのに不当にそれを取り消されたとして争った事例。
参照法条 労働基準法2章
民法623条
体系項目 労働契約(民事) / 成立
裁判年月日 1996年10月22日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成5年 (ワ) 19339 
裁判結果 棄却
出典 労経速報1626号24頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働契約-成立〕
 右に認定した事実によれば、被告会社は、平成四年九月ころ原告から持ち込まれたCCDスキャナー等の販売事業計画について、その後取り上げるかどうか検討してきたものの、結局、平成五年三月中旬に至り、社内事情等により採用しないことに決定したものであり、その間、原告にバーコードの市場やメーカー等の調査を依頼したことはあっても、原告を被告会社の従業員として雇用し、又は採用の内定をしたとは到底認められず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。
 もっとも、被告会社が原告に対して平成四年一二月二日に一五〇万円を、平成五年四月三〇日に一六〇万円をそれぞれ支払ったことは前記認定のとおりであるが、前者は、先に認定したとおり市場調査に使用するコンピュータの購入費用として支払われたものであって、雇用することを前提に支払われる支度金などという類の金員であるとは認められないし、後者は、その後の金員の支払状況等に照らして、原告がCCDスキャナー等の販売事業の検討のために行った市場調査や顧客・業者との打合せなどに要した費用の平成五年三月までの分として支払われたものと認められるから、これら金員の支払の事実をもって雇用又は採用内定を裏付けるものということはできない。
 なお、原告が被告Y1との最初の会見の際、A会社における自己の給与明細票を示したところからすれば、原告は、CCDスキャナー等の販売事業計画の進展に伴い、将来被告会社に従業員として雇用されるか、少なくとも被告会社が同事業計画を採用すれば、原告も何らかの形でこれに関与できるものと期待していたであろうとは推認されるが、被告Y1や被告Y2において、原告との交渉の過程で、被告会社が右販売事業計画の採用を決定したと受け取られるような言動はもとより、採用する方針であると確信させるような言動をとったと窺うに足りる事情は見当たらないから、その後被告会社が採用しないと決定したため原告の期待が裏切られたからといって、被告Y1及び被告Y2に信義則に反する義務違反があるとはいえない。