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ID番号 06934
事件名 従業員地位確認等請求事件
いわゆる事件名 大阪市交通局協力会事件
争点
事案概要  第一種職員の定年年齢は満六五歳、第二種職員の定年年齢は満六〇歳にし、女子の第一種職員を第二種職員と呼称変更したことにつき、定年年齢が引き下げられるため就業規則の不利益変更に当たるとしたが、本件女子職員がこれに同意をしていたとして、六〇歳に達したことを理由とする解雇を相当とした事例。
参照法条 労働基準法89条1項3号
労働基準法93条
高年齢者の雇用の安定等に関する法律4条
体系項目 就業規則(民事) / 就業規則の一方的不利益変更 / 定年制
退職 / 定年・再雇用
裁判年月日 1997年3月26日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 平成7年 (ワ) 2426 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 労働判例719号44頁
審級関係
評釈論文 堀井由紀・ジュリスト1143号139~142頁1998年10月15日
判決理由 〔就業規則-就業規則の一方的不利益変更-定年制〕
〔退職-定年・再雇用〕
 以上によれば、被告が呼称変更の措置を採ったことにより、それが就業規則の改正の前後のいずれになされたか否かを問わず、原告が第二種職員としての処遇を受けることとなり、その結果として、右呼称変更の時点において、第一種職員にとどまっておれば、満六五歳定年制の適用を受けたものの、第二種職員となったことにより、満五五歳定年制の適用を受けることとなったのであるし、その後の就業規則の改正の後も、第一種職員の定年年齢は満六五歳であるのに対し、第二種職員の定年年齢は満六〇歳であるから、右呼称変更が原告の労働条件の不利益変更をもたらすものであるといわざるをえない。
 2 呼称変更の有効性
 (一) 右判示のとおり、呼称変更は、原告の労働条件の不利益変更に当たるのであるから、原告の同意がない限り、その効力を有しないというべきである。〔中略〕
 前記認定の事実によれば、原告は、呼称変更及び就業規則の改正に際しても、組合等からこの間の事情について、さらにその詳細を知るに至ったものと推認することができる。したがって、これにより、原告は、当然に、原告らを含む若年定年制により大阪市交通局を退職して被告に就職した者は、本来は、第一種職員の予定された対象からは外れるので、原告らが男性の第一種職員の定年と同様の満六五歳定年を求めることについて必ずしも積極的な理由がないとの認識を持ったということができる。それゆえ、原告は、呼称変更により、第二種職員となっても、第二種職員の定年年齢が満五五歳であることから、昭和五五年一〇月以降第一種職員の女性の定年年齢が満五五歳であったことと比較して、実質的には、何ら定年年齢に変更を来すものではないので、自らの地位に格別変動を及ぼすものではないとして、呼称変更により第二種職員として取り扱われることに反対しなかったとも考えられ、このような事情に照らせば、原告は、むしろ、右取扱を自ら受容したものと推認する余地もあるということができる。
 以上によれば、原告は、被告の呼称変更により、自らが第二種職員として取り扱われることにつき、少なくとも、黙示の同意を与えたとするのが相当である。