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ID番号 07064
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 国会議員私設秘書セクシュアルハラスメント事件
争点
事案概要  国会議員が議員会館の事務室内で私設秘書に対して強引にキスをしようとし、スカートの下から手を入れようとするなどのわいせつ行為を行ったとして、損害賠償を請求された事例(請求一部認容)。
参照法条 民法709条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 均等待遇 / セクシャル・ハラスメント、アカデミック・ハラスメント
裁判年月日 1997年12月24日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成7年 (ワ) 21665 
平成8年 (ワ) 9857 
裁判結果 一部認容,一部棄却
出典 時報1640号138頁/タイムズ972号224頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労基法の基本原則-均等待遇-セクシャル・ハラスメント〕
 被告Y1は嫌がる原告Xに対し、その意に反して、強引にキスをしようとし、唇や頬を舐め回し、スカートの下から手を入れようとしたり、セーターをまくしあげて乳房や肩を噛んだりするなどのわいせつ行為に及んだというのであり、これは不法行為を構成するというべきである。〔中略〕
 被告Y1の行ったわいせい行為は、雇用主であり、国会議員である被告Y1がその地位を利用するとともに、有形力を行使して、原告Xの意に反してわいせつ行為に及んだものであって、その態様は悪質というほかなく、加えて、原告Xは貞操侵害の危機にさらされたばかりか、その後、A秘書の言動もあって、夫の被告Y2から原告X自身にもすきがあったのではないかと叱責されたり、家庭内で孤立し、自ら身の潔白を晴らさざるを得ない立場に追い込まれたのであって、原告Xが相当の精神的苦痛を受けたことは想像に難くない。また、原告Xは、被告Y1の要請を受けて従前の勤務先を辞めて被告Y1の事務所で勤務するようになったのに、それからわずか三か月弱で被告Y1のわいせつ行為が原因で退職を余儀なくされ、職を失ったのである。さらに、原告Xは、被告Y1に対して再三再四にわたり謝罪を求めてきたが、被告Y1は事実を否定して謝罪には一切応じていない。以上の点及び本件に現れた諸事情を総合考慮すれば、原告Xの受けた精神的苦痛を慰謝するには、金一六〇万円をもって相当と認める。