全 情 報

ID番号 07071
事件名 退職金請求本訴事件
いわゆる事件名 光栄機設工業事件
争点
事案概要  クレーン等の設置工事を業とする会社の元営業課長が、退職することが確定した後に、在職中に職務上の義務を懈怠して会社に損害を与える等の行為があったことが発覚したとして就業規則の規定に基づく退職金を減額され、右行為は懲戒解雇事由には該当せず減額は不当であるとして未払い分の請求をしたのに対して、会社が、元営業課長が従業員としての義務に違反して会社に損害を与えたとして損害賠償請求の反訴を提起した事例(退職金請求本訴認容、反訴棄却)。
参照法条 労働基準法11条
労働基準法3章
体系項目 賃金(民事) / 退職金 / 懲戒等の際の支給制限
労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 労働者の損害賠償義務
裁判年月日 1998年1月23日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 平成8年 (ワ) 7761 
平成9年 (ワ) 1220 
裁判結果 認容,棄却(確定)
出典 労働判例731号14頁/労経速報1664号10頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔賃金-退職金-懲戒等の際の支給制限〕
 右判示のとおり、前記A会社の件、B会社の件及びC会社の件における原告の対応には、多少の不適切な点があったことは否定できないものの、懲戒解雇に相当するような、重大、悪質な職務違反があったということができないのであるから、被告の退職金規程八条二号を根拠とする退職金減額の主張は、その余の点について判断するまでもなく、失当といわなければならない。〔中略〕
〔労働契約-労働契約上の権利義務-労働者の損害賠償義務〕
 前記のとおり、A会社の件、B会社の件及びC会社の件については、その責任が原告にあったと断定することはできない。さらに、仮に、被告に損害が生じていたとしても、その金額の詳細自体が必ずしも明確化されていないばかりでなく、その損害を原告に負担させることが正当化される根拠も明らかではない。
 その他、本件に顕れた一切の事情を検討しても、原告の本訴請求が権利の濫用に該当するというべき事情はないから、被告の右主張もまた、失当といわなければならない。
 三 以上の次第であるから、被告は、原告に対し、退職金残金三〇〇万四〇〇〇円(原告に支給されるべき退職金三五〇万四〇〇〇円から既払いの五〇万円を控除した残額)及びこれに対する弁済期の翌日である平成八年四月二一日(被告の退職金規程上、退職金の支払時期が退職日から一か月以内とされていることは、当事者間に争いがない。)から支払いずみまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払義務を免れないというべきである。