全 情 報

ID番号 07147
事件名 公務外認定処分取消請求控訴事件
いわゆる事件名 地公災基金宮崎県支部長事件
争点
事案概要  公立学校の体育科教諭が教室で授業している途中に脳血管障害をおこし死亡したケースにつき、業務の過重性等から業務起因性があるとして、公務外とした原処分が取り消された事例。
参照法条 地方公務員災害補償法1条
地方公務員災害補償法26条
地方公務員災害補償法31条
地方公務員災害補償法42条
体系項目 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 業務起因性
労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 脳・心疾患等
裁判年月日 1998年6月19日
裁判所名 福岡高宮崎支
裁判形式 判決
事件番号 平成8年 (行コ) 2 
裁判結果 棄却(確定)
出典 労働判例746号13頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-業務起因性〕
〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-脳・心疾患等〕
 6 Aの公務と脳出血の因果関係
 前記説示のとおり、過重な公務の継続ないしそれによるストレスの継続によって、持続的高血圧及びそれに伴う動脈硬化が招来されうるところ、前記認定のとおり、Aについては、量的、質的にかなり過重な公務が四年もの長期に渡って継続したこと、公務が過重となった時期と高血圧の程度の悪化が早まった時期が一致していること、発症直前の高校総体関係の業務は従前の職務に加重されたものであり、高校総体期間中の職務も従前の職務を特に軽減するものでなかったことからすると、Aの高血圧、動脈硬化の発症、悪化及びそれらを原因とする脳出血による死亡にAの公務が原因の一つとなっている蓋然性は認められるから、公務と脳出血による死亡との間には条件関係があり、公務がAの死亡の共働原因となっていることは明らかである。
 そこで、Aの脳出血の発症がその公務に内在又は随伴する危険が現実化したものといえるか、即ち、公務が右発症の相対的に有力な原因といえるかを検討するに、前記認定の高血圧の機序からすると、Aの高血圧の遺伝的素因、相当程度の喫煙、加齢は高血圧及び動脈硬化の悪化に影響が少なくないと認められるものの、他に想定される要因である肥満の程度は軽く、その影響は低いと解されること、不完全ながら一定の食塩制限をしており、少なくとも平均的な食事に比べると食塩は制限されていると推認できること、飲酒はあるものの、その程度は一日焼酎一合程度に過ぎず、日本酒に換算しても高血圧ないし脳卒中への影響が比較的低いとされるものであることからすると、他に想定される要因の影響は低いと考えられ、影響が少なくないと思われるもののうち、加齢は必然的なものである上、喫煙も通常人の生活で予想される程度のものであって、それらを過大に評価することは相当でないこと、遺伝的素因は認められるものの、高血圧が悪化したのはかなり過重な公務に従事した時期頃からであって、その公務に従事するまでは境界性高血圧に過ぎなかったこと、前記認定の公務の過重性の程度及びその継続期間が四年間と長期に渡り、その間何らの回復措置がとられなかったことを総合考慮すると、過重な公務がAの脳出血の発症の相対的に有力な原因となったものであり、右発症は、Aが従事した公務に内在又は随伴する危険が現実化したものであると認めるのが相当である。