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ID番号 07175
事件名 退職金等請求事件
いわゆる事件名 企画宣伝社事件
争点
事案概要  原告らのうち二名の退職金請求については、請求相手の会社との雇用関係がないものとして、右請求が棄却された事例。
 退職金を要求した原告らのうち一名については、使用者は原告の退職承諾書を受理し、退職金の支払約束をしており、その後において懲戒解雇はできないとして、退職金請求が認容された事例。
参照法条 労働基準法89条1項3の2号
労働基準法89条1項9号
労働基準法24条1項
体系項目 賃金(民事) / 退職金 / 退職金請求権および支給規程の解釈・計算
賃金(民事) / 退職金 / 懲戒等の際の支給制限
裁判年月日 1998年9月14日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成9年 (ワ) 8704 
平成9年 (ワ) 10935 
裁判結果 一部認容、一部棄却
出典 労経速報1687号18頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔賃金-退職金-退職金請求権および支給規程の解釈・計算〕
〔賃金-退職金-懲戒等の際の支給制限〕
 原告X1及び被告代表者各本人尋問の結果によれば、平成九年四月一日、被告代表者が原告X1及び同X2に対し、A会社を辞めて被告に来るようにと言ったこと、同月九日、両原告が被告での就労を断り、その際、両原告から被告の退職に関する話が出たこと、それに対し、両原告について被告の従業員であるとの認識がなかった被告代表者は、即座に対応できなかったが、同月一四日、給料も退職金も支払わない旨両原告に告げたことが認められる。このような事実に照らせば、被告代表者が述べた給料も退職金も支払わない旨の発言は、被告代表者から被告との雇用関係を前提とした解雇の意思表示であるということはできず、むしろ、雇用関係がないことを確認した発言というべきであり、他に、両者の雇用関係を認めるに足りる証拠もない以上、前記認定を覆すものではない。
 そうすると、原告X1、同X2と被告との間には雇用関係はないことになるから、両原告は、被告に対し、退職金を請求することはできない。〔中略〕
 被告は、平成九年四月一五日、原告X3を懲戒解雇した旨主張し、懲戒事由として、右の経理処理の件と原告X3の日頃の言動を挙げる。しかし、すでに認定したとおり、原告X3が故意に右のような処理をしたことを認めるに足りる証拠はなく、過失があったとしても、懲戒事由に該当する程度のものであったということもできない。
 また、被告は、原告X3の日頃の言動等を懲戒事由として主張するが、それらは、いずれも平成九年四月一〇日時点で不明確であったということは考えられず、同日、原告X3に対する退職金の支払いを約する書面を作成していることからすると、被告としても原告X3の日頃の言動について懲戒解雇事由に該当するとまでの認識はなかったというべきである。
 さらに、手続的にみても、被告は、前記のとおり、平成九年四月一五日、原告X3の退職承諾書を受理し、同月一八日に退職金の支払約束までしており、その同月一五日時点で退職によって、原告X3と被告の雇用関係は終了したというほかなく、その後(同年五月八日付け解雇通知書、第一〇九三五号事件書証略)、同月一五日付けに遡らせて原告X3を懲戒解雇することはできないというべきである。