全 情 報

ID番号 07204
事件名 地位保全等仮処分命令申立事件
いわゆる事件名 井上精機事件
争点
事案概要  従業員間の仲が悪く、一方の従業員を残すために他の従業員を解雇したことにつき、偽装企業廃止であり、このような企業廃止は著しく不正義なもので無効であり、本件解雇が解雇権濫用に当たり無効とされた事例。
参照法条 民法1条3項
商法94条
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 企業解散・事業の一部廃止・会社制度の変更
解雇(民事) / 解雇権の濫用
裁判年月日 1997年11月26日
裁判所名 大阪地
裁判形式 決定
事件番号 平成9年 (ヨ) 1860 
裁判結果 一部認容(確定)
出典 タイムズ995号159頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-企業解散・事業の一部廃止・会社制度の変更〕
〔解雇-解雇権の濫用〕
 認定事実からAが債務者廃業を決めた理由として、Bが債権者とは一緒に働けないという以外には見当たらない。債務者とC会社の実態を比較しても、従業員として債権者及びDが抜けて、新人が入っただけでほとんど変わりがなく、特に会社の営業及び会計事務という重要な仕事は、Aと同人の妻がしており、主要な受注先、仕入先も債務者からC会社がそのまま引き継いでいる。乙三のAの陳述書では、Bと債権者の仲が決定的に悪くなり、Bに辞められては他にBの仕事が出来る人はいないし、新規採用も困難であるから会社が続けられないので廃業を決意した旨の記載があるが、Bは、債務者従業員の時にはボール盤を扱っていたが、C会社では債権者のしていた汎用フライス盤を扱い、新人がBの扱っていたボール盤を扱っている。債務者がBに主要な製造機械をすべて貸していると主張するが契約書もなく、あいまいなところが多く真実賃貸借があったか疑わしい。
 以上総合すると、Aは、Bと債権者の仲が悪く、Bから自分を取るか、債権者を取るか迫られた結果、Bを取って債権者を追い出すために、廃業の名で債権者との雇用関係を否定しているに過ぎず、かような目的の企業廃止は著しく不正義な無効なもので、右企業廃止に伴う債務者の債権者に対する解雇の意思表示は解雇権濫用にあたり無効であるといわざるを得ない。