全 情 報

ID番号 07224
事件名 配置換処分取消請求事件、損害賠償請求事件
いわゆる事件名 芦屋郵便局事件
争点
事案概要  郵便局貯金課主任から集配課主任への配置換えにつき、対象職員の職歴、営業成績、健康状態、過欠員の状況などの諸事情を総合考慮して決定されており、その際の考慮事情や家庭事情からすると業務上の必要性に基づく合理的なものであり、裁量権を濫用した違法なものとはいえないとされた事例。
 右配置換えにつき、組合活動を理由としたものであるとも、支配介入であるとも認められないとされた事例。
参照法条 労働基準法2章
民法1条3項
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令権の限界
配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令権の濫用
裁判年月日 1998年10月2日
裁判所名 神戸地
裁判形式 判決
事件番号 平成6年 (行ウ) 23 
平成6年 (ワ) 1302 
裁判結果 棄却(確定)
出典 労働判例754号71頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令権の限界〕
〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令権の濫用〕
 (二) 配置換をする業務上の必要性については、配置換それ自体は職員の法律上の地位身分の変動を伴わない平行異動にすぎないのであるから、当該配置換をしなければ業務運営上著しい支障が生ずるというような高度の必要性を要求するのは相当でなく、それが職員の適正配置、事業の効率的運営、職員の勤労意欲の高揚、業績の向上等に寄与するものであれば、これを肯定すべきである。
 そして、一般的に、適材適所主義に基づく人事交流は、新しい職場への適性を認められて異動する職員の勤労意欲を高揚し、現職場への適性を欠くと判断されて異動する職員に心機一転して勤務する機会を与え、また、現職場に馴れマンネリ化した他の職員の意識感覚を改革し、新たなノウハウを活用しうる状況を作るなど、広く職員の勤労意欲の高揚等に寄与するものと考えられるところ、前記認定事実によれば、本件の貯金外務職員一名の集配課への配置換処分は、芦屋郵便局貯金課の業績が芳しくなく、業績向上及び職場活性化等の一方策として配置換も考えられていたことに加え、貯金外務の一名過員及び集配課の一名欠員という状況下でされたものであり、業績の向上、職員の勤労意欲の高揚や職員の適正配置等に寄与するものと認められるから、業務上の必要性を有するものと認めるのが相当である。〔中略〕
 6 以上によれば、本件処分は、業務上の必要性に基づく合理的なものと認められ、被告芦屋郵便局長が裁量権を濫用してした違法なものとは認められない。〔中略〕
 証拠(〈証拠略〉、原告本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告は入局以来全逓信労働組合に所属し、芦屋郵便局貯金課における組合活動において中心的存在であり積極的に組合活動を行ってきたことは認められるが、前記のとおり、本件処分は業務上の必要性と合理的な選定に基づき行われたものであり、原告の行ってきた組合活動のゆえにされたものとも、組合の弱体化を狙ったものとも推認することはできないうえ、郵便局における組合活動は、貯金課、保険課よりも郵便課、集配課の方が主力である(原告本人)ことや、本件処分は同一郵便局内での配置換であり、原告の組合員としての立場や組合活動にさしたる影響を及ぼすものではないことに鑑みると、本件処分が、組合活動を理由としたものであるとも、支配介入であるとも認めることはできないし、その他これらを認めるに足りる証拠もない。