全 情 報

ID番号 07229
事件名 地位保全等仮処分申立事件
いわゆる事件名 日本ステリ事件
争点
事案概要  雇用期間を一年とするパートタイマーの雇止めにつき、本件事実においては期間の定めのない雇用契約あるいは実質的に期間の定めのないものと同視すべき雇用契約であったとはいえず、期間満了により雇用契約は終了したとされた事例。
参照法条 労働基準法2章
民法628条
体系項目 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め)
裁判年月日 1998年10月23日
裁判所名 東京地
裁判形式 決定
事件番号 平成10年 (ヨ) 21088 
裁判結果 却下
出典 労経速報1694号12頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
二 本件雇止めについて
 債権者らはいずれも雇用契約を更新していること、各契約更新手続の際、雇用期間を含む雇用条件について十分な説明や話し合いはなかったこと、債権者らが従事していた業務は本件病院において通常的かつ恒常的な業務であったことは前記のとおりであり、審尋の全趣旨によれば、これまで本件病院において雇止めになったパートタイマーはいないことが認められることなどからすれば、債権者らが雇用継続についてある種期待を抱いた可能性も否定できない。
 しかし、一方において、債務者と各医療機関との業務委託契約が一年単位であり、債務者の業務量が変動を免れず、債務者としてはそれに対応するためにパートタイマーを多数雇用していたことは前記のとおりである。また、債務者と本件病院とは特命随意契約を締結しており、当面は契約の継続が予想されるとしても、同契約締結に至るまで債務者は経費節減に努力してきたばかりでなく、同契約の締結の際、業務委託料を前年度と同様に据え置かれたこと(書証略)からすれば、今後も経費節減は不可欠であり、その場合すでに本件病院から債務者が委託された業務の一部をA会社サービスに委託していること(書証略)から、債務者がそのような措置を講ずることも予想できないことではない。さらに、各契約更新手続の際に作成されている契約書の記載内容は詳細にわたり、勤務時間や時間給の変更も右契約書に記載されるなど、債権者らにとってはおよそ形式的で、内容を確認する必要さえないという性質の文書ではない上、それ自体から当然に契約が更新されるものとは解釈できないこと、これまで雇止めになったパートタイマーはいなかったとしても、前記のとおり債務者におけるパートタイマーの定着率は悪く、二年以上勤務している者は全体の三分の一にも満たず、契約更新者の数も多くないものと推測されるし、債権者らはいずれも雇用契約の更新をしているとしても、回数にして最も多い者で三回、雇用期間にして三年間にすぎない。
 これらの事情に照らせば、債権者らの雇用継続に対して何らかの期待を抱いていたとしても、それは少なくとも法的保護に値する程度に達していたということまではできないのであって、そうだとすれば、期間を平成九年四月一日から平成一〇年三月三一日までの一年(ただし、債権者川崎については平成九年六月一六日から平成一〇年三月三一日まで)とする本件各雇用契約は期間の満了によって当然に終了したものというほかない。