全 情 報

ID番号 07260
事件名 懲戒処分効力停止等仮処分命令申立事件
いわゆる事件名 ミック事件
争点
事案概要  クレーン運転手が車両破損事故を起こし事故報告を怠ったことを理由に一週間の出勤停止処分をした上、過去における出張命令違反、車両破損事故等を理由に一般作業職に職務変更したことにつき、運転手の不利益をやむなしとするほどの業務上の必要性があったとはいえず、権利の濫用として無効とされた事例。
参照法条 労働基準法2章
民法1条3項
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令権の限界
配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令権の濫用
裁判年月日 1999年1月12日
裁判所名 大阪地
裁判形式 決定
事件番号 平成10年 (ヨ) 2506 
裁判結果 一部認容、一部却下
出典 労経速報1712号3頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令権の限界〕
〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令権の濫用〕
 一 債務者において懲戒処分と職務変更(クレーン運転手から一般作業員への職務変更)とが厳然と区別されていたのかは疑義があるが(書証略、審尋の全趣旨)、債務者が主張するように本件職務変更が懲戒処分ではなく純然たる職務変更であったとしても、本件職務変更は、従業員の適正な配置を全体的に見直したというようなものではないし、勿論債権者の一般作業員としての適性を評価したというようなものでもない。また、債権者は、債務者に雇傭された当初からの約一五年間のほとんどをクレーン運転手として勤務し現在もその勤務を継続することを希望している者であること、クレーン運転手から一般作業職に職務変更されることにより給料の額が大幅に減少すること、本件職務変更においてはクレーン運転手への復帰が予定されていないこと(以上、審尋の全趣旨)などからすると、本件職務変更が行われることによる債権者の不利益が大きい(書証略の就業規則三七条、三八条と対比してもそのように言える)。一方、純粋にクレーン運転手から一般作業員へ職務変更するというのであれば、その必要性の判断においては、万一事故等が生じた場合の対処能力を含め、クレーン車両運転、操作の技術が最重要視されるべきものと思われるが、この点、従業員中で特に債権者がクレーン運転手としての適性を否定されるというのに十分なものがない(後記1)。さらに、債権者が主張する情状のうち、出張命令拒否、休日出勤命令拒否については、後記2、3の事情からクレーン運転手としての適性を特に否定しうる理由を見出しうるものか疑問があるうえ、時期においてかなり後の平成一〇年三月の車両事故(それ自体の評価については先に述べたとおり)後に職務変更の理由として採り上げられたことも不自然である。そして、その余の情状(債務者は平成二年の車両事故、平成四年の酒気帯び運転等を主張している)については、いずれも相当年数が経過したもので現時点になって殊更問題とすること自体奇異に思われるものである(書証略)。以上、本件職務変更は、債権者の受ける不利益をもやむなしとするほどの必要性を認め難く、権利の濫用として無効と解される。