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ID番号 07347
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 エフピコ事件
争点
事案概要  食品容器の製造販売を業とする会社が、現地採用の労働者らに対して、転勤義務がないのにあるように誤信させ、義務なき退職届を提出する立場に追い込んだ行為が不法行為に当たるとして、損害賠償が請求され、右理由を認めて請求の一部が認容された事例。
参照法条 労働基準法2章
民法709条
民法415条
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 使用者に対する労災以外の損害賠償
労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 職場環境調整義務
裁判年月日 1999年6月15日
裁判所名 水戸地下妻支
裁判形式 判決
事件番号 平成9年 (ワ) 108 
裁判結果 一部認容、一部棄却(控訴)
出典 労働判例763号7頁/労経速報1702号19頁
審級関係
評釈論文 砂押以久子・ジュリスト1189号120~122頁2000年11月15日/小宮文人・労働法律旬報1464号24~31頁1999年9月25日/本久洋一・法律時報72巻7号79~82頁2000年6月
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-使用者に対する労災以外の損害賠償〕
〔労働契約-労働契約上の権利義務-職場環境調整義務〕
 原告らに就業規則(〈証拠略〉)九条に基づく転勤義務は存在しないというべきであるにもかかわらず、被告会社はあたかも原告らにこれに応ずる義務があるように申し向けて原告らを誤信せしめ、原告X1ら三名をして、義務なき退職届を提出する立場に追い込み、退職届の提出を拒否して、転勤命令効力停止仮処分を申請した原告X2ら三名に対しても、訴訟上においても命令ではなく要請であるとの主張を繰り返し、労働現場における処遇においても、従来女子パートが担当していた日勤の業務を割り当て、管理職や他の従業員から早く辞めろとの明示、黙示のプレッシャーをかけ、あるいはかかる職場の雰囲気を放置、助長し、会社が雇傭を継続する意思がないことを様々に示して、それらの人格、名誉を傷つけ、また、第二次の分社において自らが採用される可能性がないと思い込ませ、分社を具体化するにあたっては、雑用しかない本社管理課所属としたこと、被告会社は本社転勤の要請に先立ち、関東工場の女子正社員全員を対象に希望退職の募集をし、退職金の割増の条件を示してこれを履行し、原告らとの取扱いの差別をしたこと、被告会社は、平成九年一月二〇日、転勤にどうしても同意できないならば、勤務先も地元であり、労働条件も同一である関連会社で、出向できるところを斡旋し、原告X2らは、それを拒否しているが、その斡旋は、それまでの被告会社の対応状況からいって、信頼を回復ないし払拭するものとはいえないこと、このように会社に辞めてもらうとの意思があることを肌身に感じた原告X2らも、その意に反してついに退職するに至ったことからすれば、原告らは、いずれも定年まで勤務する意思であったにもかかわらず、被告会社の虚偽、強圧的な言動や執拗な退職強要・いやがらせによって退職のやむなきに至ったというべきである。そうすると、平成八年一〇月以来の会社の原告らに対する一連の処遇は、転勤に応じないことを予測し、原告らに自己都合退職に追い込むことを意図してなされたものと推認されても仕方がないのであり、少なくとも、使用者としての前記配慮義務に反するものであって、その結果として原告らが有する意に反して退職させられない権利を侵害したものであるから、債務不履行ないし不法行為を構成するものというべきである。