全 情 報

ID番号 07351
事件名 賃金等請求事件
いわゆる事件名 関西事務センター事件
争点
事案概要  被告会社の従業員であった原告が、翌年の二月二五日でもって退職したい旨の意思表示をし、それまでの間の有給休暇届を提出したのに対して、被告代表者が、「そんなに休むと仕事にならない、一二月二六日をもってやめてもらいたい」旨を述べたことにつき、原告が一二月二六日に解雇されたとして、解雇予告手当、未払いの賞与、割増賃金があるとしてそれらを請求したケースで、雇用の終了は合意解約によるものであり、賞与の支払の合意はなかったから、解雇予告手当の支払及び賞与の支払を求める原告の請求は理由はないが、割増賃金については認められるとして請求が一部認容された事例。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法41条2号
労働基準法37条
体系項目 退職 / 合意解約
労働時間(民事) / 労働時間・休憩・休日の適用除外 / 管理監督者
賃金(民事) / 割増賃金 / 割増賃金の算定基礎・各種手当
裁判年月日 1999年6月25日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 平成10年 (ワ) 867 
平成10年 (ワ) 1200 
裁判結果 一部認容、一部棄却(控訴)
出典 労働判例769号39頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔退職-合意解約〕
 原告の退職は、当初口頭で申し出られ、これが、被告代表者によって承諾されたのは同月一一日であったというのであり、就業規則一一条の規定からすると、本来右同日、原告は退職となるべきところ、原告は被告代表者から退職日をAと相談するよう指示を受けていること、その後、被告代表者から、同月二六日をもって辞めてほしい旨の申出がなされていることなどからして、少なくとも同月一一日に退職とはしないことが黙示に合意され、右就業規則の適用は排除されていたと考えられる。
 他方、原告の退職届は、同月一二日には被告代表者の知るところとなったと認められ、これをもって、民法六二七条に規定する雇用契約の解約告知がなされたと解する余地がないではない(その場合、到達によって効力を生じる)。
 しかしながら、右認定のとおり、右退職届は、原告の退職が既に承認され、退職日を何時とするかの協議が予定されている中で提出されたものであり、これら前後の事情に鑑みるときは、解約告知というよりは平成一〇年二月一五日をもって合意解約とするとの申入れであったと解するのが相当である。〔中略〕
〔退職-合意解約〕
 被告代表者が同月二六日をもって辞めて欲しい旨述べたのは、退職日についての被告からの申込であったと解するのが相当であり、これに対し、原告が、同日退職することを前提にした有給休暇の取得を口頭で申入れたのは、退職日に関する被告の右申込を承諾したものというべきである。
 そうすると、原被告間の雇用契約は、同月二六日をもって終了させることで原被告間に合意が成立し、これによって、右同日合意解約されたものと認められる。
〔労働時間-労働時間・休憩・休日の適用除外-管理監督者〕
 被告が就業規則や賃金規程で定めている時間外勤務手当が、労働基準法が法定労働時間超過の労働に対して支給することを強制している割増賃金の趣旨であることは明か(ママ)であり、さらに、これを所定労働時間超過の労働に対してまで支給することとしたものであり、その点で、労働基準法による保護以上に拡張したものである。割増賃金の支給を命じる労働基準法の規定は強行法規であるから、単なる合意によってこれを不支給とすることは許されないし、部門長以上の役職者であることを理由に、割増賃金を含む時間外勤務手当を支給しないとするのであれば、そのような取扱いが有効とされるためには、右役職者が、同法四一条二号にいう監督もしくは管理の地位にある者に該当するか(同法一号及び三号は本件には関係がない)、あるいは右役職者に実質的にみて割増賃金が支給されていると解される場合でなければならない。
 しかるに、右にいう監督管理者とは、従業員の労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的立場にある者をいうと解すべきところ、課長に就任したことによって原告が従業員の労務管理等について何らかの権限を与えられたとの主張立証はなく、役職手当が支給されたりあるいは休暇取得や勤務時間等について多少の優遇措置が採られるようになったことは認められるものの、これらのみでは、原告が右監督管理者に該当するとはいい難い。
〔賃金-割増賃金-割増賃金の算定基礎・各種手当〕
 地位の昇進に伴う役職手当の増額は、通常は職責の増大によるものであって、昇進によって監督管理者に該当することになるような場合でない限り、時間外勤務に対する割増賃金の趣旨を含むものではないというべきである。仮に、被告としては、右役職手当に時間外勤務手当を含める趣旨であったとしても、そのうちの時間外勤務手当相当部分または割増賃金相当部分を区別する基準は何ら明らかにされておらず、そのような割増賃金の支給方法は、法所定の額が支給されているか否かの判定を不能にするものであって許されるものではない。そうすると、原告には時間外勤務手当に相当する手当が実質的にも支給されていたとは認められない。
 以上によれば、被告が、原告に時間外勤務手当て(ママ)を支給してこなかった扱いは違法というほかなく、被告は原告に対して就業規則に従った時間外勤務手当を支給すべき義務がある。