全 情 報

ID番号 07358
事件名 賃金等請求、給料等請求事件
いわゆる事件名 リンガラマ・エグゼグティブ・ラングェージ・サービス事件
争点
事案概要  語学研修等を業とする会社の従業員である原告が、残業時間の一覧表を作成し、全国一般労組を通じてそれについての割増賃金を請求したところ、解雇されたとして(会社側は自主退職と主張)、損害賠償、未払い賃金、解雇予告手当等を請求したケースで、原告に対する請求が解雇予告手当につき認容され、残業代の請求については原告の仕事が所定の時間内に処理できないということは困難である等として棄却された事例。
参照法条 労働基準法3章
労働基準法11条
賃金の支払の確保等に関する法律6条1項
労働基準法37条
労働基準法36条
体系項目 賃金(民事) / 賃金・退職年金と争訟
賃金(民事) / 割増賃金 / 支払い義務
裁判年月日 1999年7月13日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成10年 (ワ) 7906 
平成10年 (ワ) 16412 
裁判結果 一部認容、一部棄却(確定)
出典 労働判例770号120頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔賃金-賃金・退職年金と争訟〕
 原告の未払賃金の請求は金一一四万二七六〇円並びに内金九四万一八五七円に対する平成一〇年一月二四日から支払済みまで賃金の支払の確保等に関する法律六条一項所定の年一四・六パーセントの割合による遅延損害金及び内金二〇万〇九〇三円に対する同年二月一一日から支払済みまで賃金の支払の確保等に関する法律六条一項所定の年一四・六パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。
〔解雇-解雇予告手当-解雇予告手当請求権〕
 被告会社が平成一〇年一月二五日をもって原告を解雇したことは前記第三の一3(三)のとおりであり、原告は右同日をもって解雇されたことを殊更に争っているわけではないから、解雇の効力は平成一〇年一月二五日に生じたものというべきであり、したがって、被告会社は原告に対し解雇予告手当として三〇日分の平均賃金の支払義務を負っていること、解雇予告手当の支払日は平成一〇年一月二五日であることが認められ、この認定を左右するに足りる証拠はない。
 そして、平均賃金とは、これを算定すべき事由の発生した日以前三か月間にその労動者に対し支払われた賃金の総額をその期間の総日数で除した金額である(労働基準法一二条一項本文)ところ、原告が解雇されたのは平成一〇年一月二五日であるから、この日以前三か月の日数は平成九年一〇月二五日から平成一〇年一月二四日までの九二日ということになるが、この間に原告が支払を受けた賃金としては基本給の金二六万円の外に時間外手当として支払われたものが平成九年一一月分として金一万八五二五円、平成一〇年一月分として金五八五〇円がある(<証拠略>)から、平成九年一〇月二五日から平成一〇年一月二四日までに支払われた賃金の総額金八〇万四三七五円を九二日で除した金額に三〇日を乗じた金額は金二六万二二九六円であるということになる。
 また、原告の基本給(ママ)は解雇予告手当は賃金ではないから、その遅延損害金について賃金の支払の確保等に関する法律六条一項の適用はない。
 したがって、原告の解雇予告手当の請求は金二六万円(ママ)及びこれに対する支払日の翌日である平成一〇年一月二六日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。〔中略〕
〔賃金-割増賃金-支払い義務〕
 使用者が労働者に対し労働時間を延長して労働することを明示的に指示していないが、使用者が労働者に行わせている業務の内容からすると、所定の勤務時間内では当該業務を完遂することはできず、当該業務の納期などに照らせば、所定の勤務時間外の時間を利用して当該業務を完遂せざるを得ないという場合には、使用者は当該業務を指示した際に労働者に対し労働時間を延長して労働することを黙示に指示したものというべきであって、したがって、当該労働者が当該業務を完遂するために所定の勤務時間外にした労働については割増賃金の支払を受けることができるというべきである。
 そうすると、本件においても原告が被告Yから残業をすることについて明示的な指示を受けていなかったとしても、同被告から与えられた業務の内容に照らせば、到底所定の勤務時間内に当該業務を完遂することができないと認められる場合には、同被告が当該業務を指示した際に原告に対し所定の勤務時間を延長して労働することを黙示に指示したものというべきであり、原告が当該業務を完遂するために所定の勤務時間外にした労働については割増賃金の支払を受けることができる。